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2018/05/07

「恐妻家」 というのは 「恐ろしい妻」 のことじゃない

このブログでは過去にもいろいろ言葉の誤用について採り上げているが、最近になって 「恐妻」 という言葉の誤用がかなり多いことに気付いた。

180507

言うまでもなく、いや、そろそろきちんと言わなければならないのかもしれないが、「恐妻」 というのは、男性について使われる言葉であって、上の写真で紹介した "Girls Slism" というサイトの記事のように 「恐妻になるタイプ・結婚後に夫を足蹴にする未来の鬼女  恐妻になりやすい女性の特徴」 なんて用い方をするのは、完全に誤用である。「Goo 辞書」 にも次のようにあるから、改めて確認してもらいたい。(参照

きょうさい 【恐妻】

夫が妻に対して頭の上がらないこと。「恐妻家」

ここに示されているように、「恐妻」 というのは決して 「恐ろしい妻」 ではなく 「妻を恐れる夫」 のことなのである。ちょっと前の映画なんかで、「いやあ、彼は恐妻家だから、あんまり遅くまで酒に付き合わせちゃいけないよ」 なんていうようなセリフがよくあった。ところが今や、本来の意味は褪せてしまったようで、ちょっと検索しただけで誤用がゴロゴロ見つかる。下に紹介する例はほんの一部である。

恐妻家と相性が合う旦那の特徴 | 特徴.COM

恐妻家の妻はこんなにも恐ろしい特徴を持っている! - 主婦知恵

アナタの彼女は当てはまってない!? 結婚後、恐妻になりそうな女性の特徴

恐妻家の女性と上手くいく旦那の特徴|

恐妻家になる女性の特徴や心理と恐妻家と相性がいい旦那の特徴

上から 2番目の 「恐妻家の妻はこんなにも恐ろしい特徴を持っている」 という文言は、「あれ、『恐妻家の妻』 なんだからいいんじゃないの?」 と思われるかもしれない。しかし本文の 「夫を尻に敷くタイプと言える恐妻家の女性。 旦那様から恐れられている存在ですが、このように恐妻家になる女性には性格に特徴や共通点があります」 という文言を読めば、「ははあ、やっぱり誤用か」 と、がっくりくるだろう。

まあ、記事の内容も一見すると心理学的な視点で書いてあるようにみえたりするが、結局は通俗心理学にも及ばないレベルだから、読んでも時間の無駄だ。それは他の 4つの記事にしても同様である。「恐妻」 という言葉の意味も知らないライターの書いた記事だから、しょうがないといえばしょうがない。

とはいえ、いつも言うように言葉というのは生き物みたいなものだから、近い将来、国語辞書の 「恐妻」 の項の解説も 「夫が妻に対して頭の上がらないこと。または、夫をそのようにさせる妻のことも言う」 ってな具合に変わってしまうかもしれない。

それにしても 「恐妻」 を 「恐ろしい妻」 と解釈するのは、かなり即物的で趣味が悪いんじゃないかなあ。

それから、ついでに言ってしまうが、上の写真で紹介した "Girls Slism" というタイトルの意味がさっぱりわからない。とくに "Slism" って、一体何だろう。辞書を引いても見当たらないし、サイトの中でもちっとも解説されていない。

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言葉」カテゴリの記事

コメント

"Girls Slism"運営会社の他のコンテンツを見ると、もともとはダイエット情報サイトのようなので、"slimism"→長いし"slism"にしてしまえ、ということではないかと。
http://www.amazejapan.com/press/

投稿: 重箱の隅 | 2018/05/08 05:39

重箱の隅 さん:

ありがとうございます。どうもそのようですね。

最初に立ち上げたダイエット総合情報サイトが "slism.jp" で、その後にそれを英語で発信する "slism.com" を立ち上げ、さらに 「女性向けの大型情報サイト『ガールズSlism』」を、"slism.net" で立ち上げたというわけで、"slism" という造語を自分でかなり気に入っちゃってるみたいですね。

投稿: tak | 2018/05/08 20:22

いやはや…僕はどちらかというと、誤用もずっと流通してしまえば誤用じゃなくなってしまうのに寛大な方だと思っているのですが(確信犯とか煮詰まるとかはもういいかなと思ってる)
これはちょっと納得いかないですね。
どう考えても男性に対する言葉なので、最初は読んでて意味がよくわかりませんでした…。

投稿: ひろゆき王子 | 2018/05/08 22:56

ひろゆき王子 さん:

確かに、「確信犯」 「煮詰まる」 は、もう新しい意味での用法が定着してますね。私も、もう OK と思ってます。

ただし、女性を 「恐妻」 とするのは、困った話ですよね。

投稿: tak | 2018/05/08 23:18

今回の誤用とは路線を異にしますが、「鬼嫁」についても、「鬼の様な(粗暴な)嫁」と言う使われ方ですかね。

元プロレスラーご夫婦の奥様は、「家族に害が及ぶ際には鬼にでもなって全力で守る」ことを、表現しておられました。

鬼についての思い出ですが、「オレはいざと言うときには、蛇(じゃ)にでも蛇(へび)にでもなる。」と息巻いていた元職の取引先さん、お元気かしら。

投稿: 乙痴庵 | 2018/05/09 08:34

乙痴庵 さん:

その 「元プロレスラー夫婦」、どうみても嫁の方がタレント性は上ですね (^o^)

>「オレはいざと言うときには、蛇(じゃ)にでも蛇(へび)にでもなる。」

おんなじやん (^o^)

それにしても、「ジャにもヘビにも」 あるいは順序が逆の 「ヘビにもジャにも」 というのは、実際あちこちでよく聞いて、ずっこけそうになります。

これって、『道成寺』 から来てるのかなあと思って調べてみましたが、とくにそういうことはなくて、昔から 「鬼が出るか蛇が出るか」 みたいな言い方がされていて、そのバリエーションみたいですね。

投稿: tak | 2018/05/09 20:46

”須く”も誤用の多い言葉ですね。“全て”とか“総じて”という意味で使う人が多いですね。

という私ですが、辞書の説明がピンとこないです。
ーーーーーーーーーー
デジタル大辞泉から引用。
- 須くの用語解説 - [副]《動詞「す」に推量の助動詞「べし」の付いた「すべし」のク語法から。漢文訓読による語》

多くは下に「べし」を伴って、ある事をぜひともしなければならないという気持ちを表す。当然。ぜひとも。「学生は須く学問を本分とすべき ...
ーーーーーーーーーー
説明の前半の部分が国語力のない私にはわからない。悲しい。

投稿: ハマッコー | 2018/05/11 01:30

ハマッコー さん:

「すべからく」 については、なんと、13年以上前に書いていますね。(以下、URL)

http://tak-shonai.cocolog-nifty.com/crack/2005/02/post_18.html

これ、納得するには、とりあえず 「すべし」 よりもその連用形 「すべく/すべかり」 から入る方がしっくりくると思います。(深い意味はなく、単に 「カ行」 なので)

「すべく/すべかり」 の関連で、 「曰く」 (イワク) あるいは 「宣はく」 (ノタマワク) を想起し、以下の道筋で納得してください。

1. まず、「これって、『言うことには』 とか 『のたまうことには』 って意味だよね」 と確認して、
2. 一歩踏み出し、「じゃあ、『すべからく』 は、『するべきであることには』 というようなことになるよね」 と確認し、
3. 「『するべきであることには』 は、ちょっと言い方を変えて 『するべきであるように」 ってことにもなるよね」 まで踏みだし、
4.じゃあ、『すべからく〜すべし』 は、『するべきであるように〜するべし』 ってことだよねと、納得

投稿: tak | 2018/05/11 20:45

丁寧な解説ありがとうございました。
「須らくは」人前で使ったことは一度もありません。
ちょっとかっこつけたようでこっ恥ずかしい感じがありますからね。

それから文化庁も「全て」「総じて」の意味が生じてしまうのは仕方がないかもしれないという捉え方のようです

http://www.bunka.go.jp/pr/publish/bunkachou_geppou/2012_07/series_10/series_10.html

投稿: ハマッコー | 2018/05/12 13:11

ハマッコー さん:

私も前のコメントのリンクで、

「すべからく」 を 「全て」 とか 「総じて」 とか 「概して」 とかいう意味で使うのも、あながち、まったくの見当外れというわけではない。元々、そうしたニュアンスはたっぷり含んだ言葉なのである。

と欠かざるを得ませんでした ^^;)

昨今は 「誤用、誤用」 と騒ぎ立てるのも鬱陶しくなってきた雰囲気がありますね。

投稿: tak | 2018/05/13 18:22

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