「学力低下」 と 「ゆとり教育」
OECD が国際的に実施した学習到達度調査 (PISA) で、日本の高校生の 「学力」 低下が浮き彫りになったという。とくに、読解力、応用力の低下が問題だという (参照)。
このニュースが流れてから、またぞろ 「ゆとり教育」 が悪者にされているが、ちょっと気を付けて考える必要があると思うのだ。
学校の週休二日制がいけないというなら、フィンランドがあんなにまで成績がいいという事実を、どう考えればいいのか。フィンランドの学校はずっと前から週休二日制で、授業の進め方も、日本の 「ゆとり教育」 に近いシステムだという (参照)。
今回の学力低下の指摘もあり、「ゆとり教育」 は見直される方向に進んでいるが、今後 「すし詰め教育」 を復活させたとしても、PISA での日本の高校生の成績が劇的に上がるとは、私には思えない。
まず、基本的なところから考えてみよう。PISA というのは、"Programme for International Student Assessment" の略である (なぜか英国式スペルだ)。公式な日本語訳というのは確定していないようで、ニュースでも、なんとなく 「国際的な学習到達度調査」 なんて言われている。
だが、この訳し方はオブラートかぶせすぎじゃなかろうか。いっそ直訳で、「国際的学生査定活動」 と言えばいい。文字通り、学生または生徒の資質査定プログラムじゃないか。各国の学生、生徒が 「使えるかどうか」 を 「査定」 しているのである。
で、この 「使えるかどうか」 を見定める基準というのが、日本国内の受験勉強の基準とは、ちょっと違うようなのだ。日本の高校生が日頃取り組んでいるのは、国内の大学受験でいい成績をとるためのトレーニングであって、PISA 向けのトレーニングとはかなり違う。
講道館柔道の猛稽古を積んだ日本選手が、国際柔道の大会では外国選手に負けてしまうようなものである。
試しに、○×式を多用し、単純計算や丸暗記がものを言う試験ならば、日本の高校生は、多分今でもトップクラスだと思う。(もしかしたら、韓国の方が上かも知れないけれど)
これまでは、日本の高校生も 「詰め込み教育」 による基礎学力の高さで、応用問題にもなんとか対応できていた。ところが、昨今の 「ゆとり教育」 で、教育そのもののコンセプトが代わり映えしないまま、授業時間数だけが削減されてしまったのだから、そりゃ、総合的な学力が落ちるのは当然だ。
講道館柔道だって必死の猛稽古によって、まるで別種目みたいな国際柔道の大会でも上位を取れているのである。講道館柔道のシステムそのままで稽古量を減らしたら、日本の柔道は国際大会でメダルを取れないだろう。そんなようなことを、日本の教育はやってしまったのだね。
「ゆとり教育」 をやめて進学塾みたいな詰め込みをやればいいということでは決してない。根本的には、単純計算が得意で歴史の年号なんかをチマチマ暗記しているやつと、読解力、応用力があり、ものごとをきちんと論理的に自分の言葉で説明できるやつと、どっちが 「使えるやつ」 かということである。とくに国際舞台において。
最近、フィンランドの教育システムが注目されている。フィンランドでは、「勉強する」 という言葉の代わりに 「読む」 をよく使うんだそうだ。「テスト前だから読まなくちゃ」 なんてことになるらしい (参照)。
そう言えば、私は 「勉強」 なんてほとんどしなかったけど、手当たり次第に本を読んでいたよなあと思う。
おかげで、田舎の名ばかりの進学校で、高校 3年の 2学期の終わりの成績は、350人中 278番まで下がっていたが、12月と 1月の、正味たった 2ヶ月の受験勉強をしたら、なんなくワセダに入れた。入試の時、問題用紙を見て 「何年も受験勉強ばかりして、こんな簡単な試験に落ちるやつは、気の毒だなあ」 と、本気で思った。(イヤミに聞こえたら、ごめん)
どうやら、よく 読んでいれば、受験勉強用のキャパシティも自然に身に付くようなのだ。受験勉強で応用力がつくかどうかは知らないが。
そういえば、5年半以上前に、これと似たようなことを書いているのを思い出した。(参照: 「ゆとり教育」 論議への疑問)
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世の中では 「コロンブスの卵」 というエピソードがあって、卵の下をコツンとつぶして立てるというのが、さも大発見のように扱われている。