カテゴリー「言葉」の405件の記事

2017/12/17

「不要タイヤが必要になる」 だと?

朝のラジオの道路情報で、女性キャスターが 「関東北部では不要タイヤが必要になるところがあるかもしれません」 と言うのを聞いて、一瞬ぽかんとしてしまった。まあ、すぐに 「冬用タイヤが必要になる」 と言ったつもりなのだと理解したが。

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演劇やアナウンスの訓練では、「一音一拍」 ということをしっかりと体に叩き込む。「冬用」 は、極端に区切って言えば 「ふ・ゆ・よぉ」 となるのであって、「ゆ」 と 「よ」 を曖昧に一拍にして 「ふよぉ」 と言ったり、甚だしくは 「ひゅよぉ」 とかになっちゃったりしたら、すぐにダメ出しされてしまう。

ところが最近のアナウンサーやキャスターなどは、この一音一拍がかなりおろそかになっている。まあ、「不要タイヤが必要になる」 というのはかなり極端な例だが、そのほかで気になる例を挙げれば、「手術」 が 「しゅーつ」、「衆院議員」 が 「しゅいんぎん」 になったりするのは日常茶飯事だ。「祝辞」 が 「しくじ」 (アタマの 「しゅ」 が無声音の "sh" になる) 「茶髪」 が 「ちぱつ」 (これも、アタマが無声音の "ch") になったりするのも、結構よくある。

さらに最近目立つのは、「東京オリンピック」 を 「冬季オリンピック」 に聞こえる発音にしてしまう例で、お笑い芸人なんかだと、単なる印象ではあるが、8割以上が陥っている罠だ。話の流れで 「東京オリンピック」 のことと理解されちゃうのだろうが、私みたいにアスペルガー一歩手前の人間だと、結構戸惑ってしまうのだよ。

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2017/11/26

サグラダ・ファミリアの思い違い

私は毎日新聞朝刊に連載されている漫画 『桜田です』 のファンで、このコラムでもこれまでそれについて 2回も書いている。("漫画 『桜田です!』 が好きだ" "毎日新聞朝刊の 「サクラダ・ファミリア」(聖なる桜田家)")

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ファン心理が昂じて、2度目のものは "毎日新聞朝刊の 「サクラダ・ファミリア」"などと、「聖なる桜田家」 扱いにしているほどだ。ところがこの件で、「あれは 『サクラダ・ファミリア』 じゃなくて、濁点の入る 『サグラダ・ファミリア』 だよ」 と忠告してくれる人がいて、ちょっとコケかかった。

スペインの (というか、ビミョーな時期なので 「カタルーニャの」 としておく方がいいかも) 「サグラダ・ファミリア」 が、「サクラダ…」 ではないことぐらい百も承知の上の洒落のつもりだったのだが、通じなかったようなのである。これだから洒落も案外難しい。

ところで、ふと思い立って、「サクラダ・ファミリア」 でググってみるとどうなるのかと、ちょっとやってみた。検索は 「サクラダファミリア -サグラダ」 とした。「サグラダ」 という正しい表記を除外して、純粋に 「サクラダ…」 だけが検索されるように計らったのである。

で、その結果は、なんと 108万件が引っかかったのである (参照)。すごいなあ。トップにあるのはなんとまあ、「サクラダファミリア ツアーに関する海外ツアー」 というタイトルの阪急交通社のツァー情報だ。うぅむ、海外ツァーのプロにしてこの始末か。4番目にある 「サクラダ・ファミリアの賃貸物件情報 (山形県山形市/アパート)」 というのは、ちょっとアヤシい物件じゃないかと思われかねない。

どうやら日本には、あのアントニオ・ガウディによる教会建築が 「サクラダファミリア」 だと思っている人がかなり多いようなのである。まあ、スペイン語の "sagrada" (神聖なる) は英語の "sacred" と語源を同じくしているので、間違えてもしょうがないという気もするけどね。

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2017/11/11

「留辺蘂 (るべしべ)」 という地名

今月 1日から 5日まで、北海道に出張していて、とくに 3日から 5日まではレンタカーを借りて網走、北見、置戸 (おけと) 方面を走り回った。北海道の地名というのはアイヌ語に漢字を当てはめたのが多いので、かなり読みにくかったりするが、中でも 「留辺蘂 (るべしべ)」 は、難読の上に書くのも大変そうな字として強烈に印象に残った。

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留辺蘂はアジア最大の水銀鉱山のあった町として、知る人ぞ知る存在であるらしい。地名の由来は、Wikipedia によればアイヌ語の "ru·pes·pe, ru·bes·be" に由来し (参照)、北見市のサイトでは次のように解説されている。(参照

アイヌ語では、道のことを 「ルー」 越える道を 「ルペシュペ」 と称し、本町の場合は佐呂間別川へ越す道の意味で、ペをベにし、シュペをシベにして 「ルベシベ」 と訳し、さらに漢字の 「留辺蘂」 をあて、今日にいたっています。

なるほど、いわゆる 「峠」 のような地形になっているところを、アイヌ語では 「ルペシュペ」 と称したわけだね。そう言えば、アイヌ語を研究していた父に聞いた覚えがある。上述の Wikipedia ページによると、日高支庁静内町にも同じ 「るべしべ」 と読む 「碧蘂」 という地名があるらしい。これなんか同じような地形が語源なんだろうが、「留辺蘂」 に輪をかけた難読地名である。

「蘂」 という漢字は、音読みは 「ズイ」 で、訓読みは 「しべ」。一見ものすごく難しい漢字に見えるが、「芯」 の下にもう 2つ 「心」 を書いて、その下に 「木」 を書くと分析すれば、覚えやすい。JIS 第二水準漢字で、「るべしべ」 と入力すれば、呆気ないほどあっさりと 「留辺蘂」 に変換される。

ちなみに、「蘂」 という字の下の 「木」 という部分を取って、くさかんむりの下に 「心」 を 3つ書いた 「蕊」 というのが、「芯」 という字の旧字体なんじゃないかという気がしていたが、手持ちの漢和辞書 (三省堂 『携帯漢和中辞典』) を調べたところ 「蕊」 は 「蘂」 の異体字で、さらにくさかんむりの下に 「正」 の字を 3つ書く 「蕋」 という俗字もあるという。ATOK では 3つとも 「しべ」 と入力して簡単に変換できたのに驚いた。

国語辞書で 「蘂」 の意味を引けば 「花の生殖器官」 と出てくる。「おしべ/めしべ」 は、本来 「雄蘂/雌蘂」 と書くものらしい。迂闊なことながら、こんなのはこの年になって初めて知った。いやはや、辞書は調べてみるものである。

とはいえ、同じ辞書でも漢和辞書の方ははうんざりするほど調べるのが面倒なので、普段はできるだけ手を触れないようにしていて、今回久しぶりで開いてみた。中国の人は大変だろうなあ。といっても、中国人は漢和辞書なんて引かないか。

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2017/11/09

「ロス」 とか 「ヘリ」 とかいう省略形

昨日から新聞に 「ヘリ墜落」 の見出しが踊っている。奇しくもあの日航ジャンボ機墜落と同じ、群馬県上野村である。

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ところで、この 「ヘリ」 という言い方だが、元々は新聞紙上の字数制限のためにしかたなく生み出された省略形だと思っている。日常会話でも 「ヘリ」 なんて言う人がいるが、私はちょっと気恥ずかしくてできない。そして 「ロサンジェルス」 を 「ロス」 と省略するのは、その 10倍ぐらい気恥ずかしい。言うまでもなく、「ヘリ」 も 「ロス」 も、(多分) 日本でしか通用しない言葉である。

「ロス」 というのはその昔、力道山が言い始めて広まったんじゃあるまいかと思っている。その頃ようやく普及したテレビで、「ロスのタイトルマッチで、ブラッシーに勝った」 なんて、意気揚々と語るのを見たような気がする。

それ以来、なんとなく、あまり趣味のよろしくない成金のオジサンとかオバサンが、「ロスに行ったら……」 なんて言うのが流行ったような印象がある。こう言っちゃナンだが、あの細木数子センセーあたりにとてもよく似合う言い方だ。さらに、「ロスでヘリをチャーターしてよぉ」 なんてことになったら、もう目も当てられない。

まあ、ざっと言えば、「ヘリ」 の発生元は新聞、「ロス」 は力道山ということだと思っている。確証はまったくないけど。

で、新聞というのは 「ヘリ」 だけじゃなく、ずいぶん乱暴な省略形を使うことが多い。とくに多いのは外国の首脳の名前だ。ブッシュ元大統領は 「ブ大統領」 、オバマ前大統領は 「オ大統領」 とされてしまっていた。「ブッシュ氏」 とか 「オバマ氏」 とか書けばいいと思うのだが、日本は肩書きが好きだから、見出しでも欠かせないのだね。

で、トランプはまだ 「ト大統領」 と略されていないような気がしてググってみたところ、朝日新聞の見出しにその表記が見つかった。ところがどうも様子がおかしい。日付も 「昭和 25年 3月 1日」 なんてことになっているし。本文を読んでみたら、これはトランプではなく、「トルーマン大統領」 のことだった。

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ということで、お粗末。

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2017/11/06

「朝食バイキング」 が "MORNING VIKING" というネタ

このところ仕事の都合で旅から旅への旅烏となっていて、忙しすぎてネタを仕入れる隙がない。仕方がないので、昨夜から泊まっているホテルで見かけた 「残念な看板」 ネタでお茶を濁させていただく。

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このホテルは、いわゆる 「バイキング・スタイル」 の朝食サービスがあるのだが、朝の 7時からの提供となっているので、夜明け前の 5時には出かけなければならないミッションを抱えている私としては、その恩恵にあずかっていない。悔し紛れに、看板をネタにしちゃおうというわけだ。

おわかりの方は、写真を見ただけで笑っちゃうと思うのだが、「朝食バイキング」 の英文表記が "MORNING VIKING" (朝の北欧海賊) と標記されている。せっかく外国人のために英語を添えているつもりなのだろうが、ここまで典型的に残念なのも最近では珍しいかもしれない。

「バイキング」 が和製英語で、ほとんどの外国人には通じないってことは、実は案外知られていないのだね。じゃ、英語ではどう言うのかといえば、辞書を引くと "smorgasbord" という単語が出てくる。ただ、「スモーガスボード」 なんていうのは、外来語として全然知られておらず、「相撲ガス板」 みたいなイメージになってしまうので、日本人の感覚ではえらくこなしにくい。

経験としては、外国に行っても  "smorgasbord" なんて単語は一度も聞いたことがないので、やはりあまり一般的な言葉じゃないのかなあと思っている。よく聞くのは "buffet" という単語なのだが、これ、フランス語読みか何かでは 「ビュッフェ」 という言い方で日本語化している。

しかし 「ビュッフェ」 というのは、どうも 「見晴らしのいい食堂」 みたいなイメージで受け取られているみたいで、「バイキング」 とはあまり一致していないのが痛恨だ。最近はようやく、ツァーの添乗員などが 「このホテルの朝食は 『ビュッフェ・スタイル』 となっておりますので……」 なんて言うこともあるようだが、いわゆる 「バイキング・スタイル」 のことと受け取ってもらえなかったりして、なかなか定着していない。

それにこの単語、英語では 「バフェイ」 みたいな発音なので、ますます日本語化しにくいという事情もあって、日本語ではあくまでも 「バイキング」 なのだね。だからといって、英語で "MORNING VIKING" と表示してもしょうがない、"BREAKFAST VIKING" とでも書いてくれれば、健気な努力の跡だけは偲ばれるのだが。

それからこの看板でもうひとつ残念なのは、値段が 「1円」 になってしまっていることだ。「¥1.000 (税別)」 と表示されているのだが、「1」 の次が 「コンマ」 じゃなくて 「ピリオド」 (小数点) なので、「1円ゼロ銭ゼロ厘」 ということになっている。私は言葉を文字通りに受け取ってしまうアスペルガー傾向があるので、こういうの、どうもこだわっちゃうんだよね。

アスペルガーに頑固要素の加わった親父がいて、「ワシは看板の表示通り、1円以上はびた一文払わん」 なんて言い張ったらどうなっちゃうだろう。

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2017/11/03

今敢えて、「ビックカメラ」 は、なぜ "Big Camera" じゃないのか

家電量販店の 「ビックカメラ (Bic Camera)」 が 「ビッグカメラ (Big Camera)」 ではなく、濁らない 「ビック」 だというのは既にかなり知られた話になっているが、それでもまだ間違える人がいるというのは、「バッグ (bag)」 と 「バック (back)」 が区別できないお年寄りがいるのと同様、しょうがないことだろう。

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「ビッグ」 じゃなくて 「ビック」 なのだというのは知られているが、それではなぜそうなのかということについては、まだほとんど知られていない。とはいえその説明は既にされていて、同社のサイトに次のようにある (参照)。

「Bic」 はバリ島のスラング (俗語) です。「大きい (Big)」 の意味を持つ一方、ただ大きいだけでなく中身を伴った大きさ、という意味もあります。「限りなく大きく、限りなく重く、限りなく広く、限りなく純粋に。ただの大きな石ではなく、小さくても光輝くダイヤモンドのような企業になりたい」 という希望をこめて、「ビックカメラ」 と命名しました。

ここでは 「バリ島のスラング」 で、"「大きい (Big)」 の意味を持つ" などとされているが、「英語の "big" から生じたスラング」 とは明言されていない。ところがいつの間にかいろいろなページで、しっかりと、 「(オセアニア、インドネシア、バリ島などで使われる) 英語のスラング」 とか 「英語の方言」 とされてしまっている。Wikipedia では次のように解説され、一応 「(要出典)」 とされている (参照) が、とにかく曖昧な情報の伝聞というのは、コワいものだ。

会社の公式発表では 「ビック (bic)」 とは英語の方言で 「(外見だけでなく中身も) 大きい」 の意である (元はbig)。創業者の新井隆司は、バリ島を訪れた際に現地の子供たちが使っていた 「ビック、ビック」 という言葉に、「偉大な」 という意味があると聞いて社名に使ったと述べている。

私は英語のページをしらみつぶしに調べてみたが、「"bic" が "big" のスラングで、『中身の伴った大きさ』 を意味する」 なんてことを裏付ける記述はついぞ発見できなかった。何しろ 「中身の伴った大きさ」 だったら、"great" というよく知られた言葉があるのだから、妙な言い方をする必要はない。

そもそも "big" と "bic" の発音の違いなんて、音韻学的にはかなり微妙なもので、だからこそ 「バッグ」 と 「バック」 の区別も付きにくいのである。いろいろなページで 「創業者の新井氏がバリ島で現地の子どもたちの使う "bic" という言葉を聞いて、印象に残った」 などとされているが、ちょっと観光で行った先の子供たちの言葉の、微妙な発音の違いに 「おや?」 と思うほど注目したなんて話は、にわかには信じがたい。

そんなことを思いながらもう少し検索していたところ、「科学技術のアネクドート」 というブログに "ビックカメラ」 社名の由来に 「バイクバイク」 説も" という記事があるのを見つけた。少し引用させて戴く。(「アネクドート」 とは、ロシア語の小話をさす 参照

この件について、米国の言語学者で、オックスフォード大学出版の英語辞典の編集などに携わったことのあるベン・ジマー氏は、彼のブログでつぎのように推察しています。

「(中略) 私は、新井氏の 『ビック』 には英語とは関係ない、より考えられうる原因があると思っている。インドネシア語で、非常にありふれたことばのひとつが 『バイク (baik)』 であり、『よい、素晴らしい』 を意味するのだ。『バイク』 は会話ではしばしば 『バイク、バイク』 のようにくりかえして使われる……」

このブログの筆者、漆原次郎氏は、子どもたちが 「バイク、バイク」 と早口でしゃべれば、「ビックビック」 と聞こえがちとして、「バリ島の子どもたちがしゃべっていたことばが 『ビック』 と聞こえたからこそ、『ビックカメラ』 の社名は誕生したのでしょう」 と結論づけている。それならあり得ることで、私はとりあえず、この説を支持しておこうと思う。

ちなみに私は、「大きなカメラ」 なんて持ち歩きたくない。そしてボールペンで有名な "Bic" の名称は、創業者の名前、Marcel Bich (マルセル・ビック) に由来しているが、これはフランス語のつづりをそのまま使ったら、英語の "bitch" と紛らわしいので、"Bic" にしたのかもしれない。

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2017/10/27

「片食」 (片餉) という単位

今朝の NHK ラジオ 『すっぴん』 という番組の、高橋源一郎さんが担当している、「源ちゃんのゲンダイ国語」 というコーナーで、『はかりきれない世界の単位』 (著・米澤敬)  という本が紹介されていた。 「単位」 についてのウンチクを語り尽くした本らしい。さっそく Amazon で注文した。

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日本語には 「一個」 とか 「一台」 とか 「一丁」 とか 「1降り」 (刀を数える場合) とか、いろいろな数え方の単位がある。三味線を 「一棹 (さお)、二竿……」 と数えるのはまだ知られているが、世界にはさらにレアな単位があるらしいのである。

今朝の番組で紹介されていたのは、「源ちゃんのゲンダイ国語」 というコーナーだから、当然と言えば当然だが、日本語の 「カタゲ」 という単位だ。これ、食事の回数を数える単位で、漢字では 「片食」 と書くらしい。この番組の関係者は高橋源一郎さん始め、誰も知らなかった言葉だという。手持ちの 『大辞林』 にも載っていなかった。

しかしこれ、私の生まれた山形県庄内地方では、今はどうだか知らないが、昔は案外フツーに使われていた。もっとも庄内弁のことだから、一食のことを 「ひとがだげ」 と、しっかり訛る。例えば人に食べ物をおすそ分けする時など、「"ひとがだげ" ばりで、もっけだんども……」 (一食分ばかりで、恐縮だけど) なんて言うのである。

後半の 「もっけだ」 に関しては、12年も前の "方言ブームと 「もっけだ」 の意味" という記事で詳しく触れているので改めて書かないが、さらに庄内弁では 「片食」 という単位がしっかりと生きていたわけだ。いやはや、庄内弁は古語の宝庫である。

で、さらに話は重箱の隅に至るのだが、「カタゲ」 の語源というのは、昔の食生活に由来するらしい。昔は一日二食が庶民の標準だった (参照) から、その片方の一食のことを 「片食」 というようになったと言われている。

そしてその漢字表記は、「片食」 ばかりではなく 「片餉」 というものもある。「夕餉 (ゆうげ)」 の 「餉」 である。ちょっとググってみたら、泉鏡花などは小説の中で 「片餉」 と表記していたようだ。「ふりがな文庫」 というサイトに、以下の例文がある。(参照

余り旨そうなので、こっちは里心が着きました。建場 (たてば) 々々で飲酒 (や) りますから、滅多に持出した事のない仕込の片餉 (かたげ)、油揚 (あぶらげ) の煮染 (にしめ) に沢庵というのを、もくもくと頬張りはじめた。 (『唄立山心中一曲』)

個人的には、「片食」 よりも 「片餉」 という表記に惹かれるなあ。

それから最後に触れておくが、私はこの放送で遠藤賢次が死んだことを初めて知って、ショックだった。追悼の意味で、下に 『夜汽車のブルース』 の動画を埋め込んでおく。1970年、中津川フォーク・ジャンボリーでのパフォーマンスだ。『カレーライス』 の方がお好きだったら、こちらへどうぞ。

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2017/09/22

"COIN WASHER" というのは、ちょっとなあ

「コインランドリー」 というのは和製英語といわれている (下の 【追記】 参照) が、これに関しては、私はつべこべ言わずに認めてもいいと思っている。"Coin laundry" と言えば、外国人にも通じてしまいそうだし。

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先日泊まったビジネスホテルは大浴場 (天然温泉) 付きで、しかもガラガラにすいていたので、気持ちよくゆったりと暖まることができた。大浴場の隣にはコインランドリーがあり、温泉に浸かっている間に、楽々洗濯できたのも嬉しかった。しかしこのコインランドリーの洗濯機と乾燥機をみて、ちょっとカックリきてしまった。

設置してある洗濯機には "COIN WASHER"、乾燥機には "COIN DRYER" と表示されていたのだよね。うーん、"COIN LAUNDRY" なら認めるけど、申し訳ないが、これはやっぱり認めにくい。

これでは 「小銭洗い機」 「小銭乾燥機」  (「小銭を洗う機械」 「小銭を乾かす機械」 ってことね。念のため) ということになってしまう。"Car washer" が 「クルマを洗う機械」 で、"hair dryer" が 「髪を乾かす機械」 であるのと同様なのは、言うまでもないよね。下手したらマネーローンダリングの機械と思われちゃいそうだが、小銭を洗うぐらいでは、その目的には全然足りないだろうし。

「小銭洗い機」 の方には、「AQUA 洗濯機 5kg」 とあり、ちょっと調べてみたところ、この "AQUA" というのはコインランドリーの業務用機器で国内トップシェアを誇る会社であるらしい (参照)。国内の市場をよほど大切に考えているんだろうね。

【追記】

よく調べてみたところ、”Coin laundry" は、和製英語というわけでもなさそうだとわかった。"Coin Laundry" というタイトルの歌があり、Wikipedia に、次のように述べられている。(参照

"Coin Laundry" is a song performed and written by Australian singer–songwriter Lisa Mitchell from her first studio album, Wonder (2009).

("Coin Laundry" は、オーストラリアのシンガー・ソングライター、リサ・ミッチェルによって書かれ、演奏される歌で、彼女の最初のスタジオ・アルバム "Wonder" に収められている)

少なくとも、オーストラリアでは "coin laundry" で通じるようだ。

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2017/09/03

「キャッシュ・アンド・キャリー タジマヤ」 のラジオ CM

普通の人は全然気にならないことがものすごく気になってしまうという、面倒な性分である。その私が何十年も気になっているラジオ CM があり、心に引っかかっちゃってたまらないので、いっそここでぶちまけてすっきりしてしまおうと思う。何かといえば、「キャッシュ・アンド・キャリー タジマヤ」 という現金卸問屋の CM である。下の画像をクリックして聞いてみていただきたい。

関東在住でラジオをよく聞く人なら、少なくとも一度は耳にしたことがあるだろう。タジマヤというのは、東京台東区根岸に本社を置くお菓子、食品、日用雑貨の現金問屋で、TBS ラジオなどで長年にわたって CM を打っている。ナレーションは私の大好きな大沢悠里さんで、こうして YouTube で聞いてみるとずいぶん若い頃の声である。

で、何が気になるのかというと、この CM のジングル部分が、「ちゃっしゃいむちゃりー タジマヤ」 としか聞こえないのだ。本当に、何十年も聞いているのだが、そうとしか聞こえないい。

中にはもっとモヤモヤしちゃってる人がいるようで、Yahoo 質問箱に "CM の最後の 「やっしゃいらりー、たじまや!」 とかなんとかいう歌が、一体全体なんと歌っているのか分からず、毎回悶々としています" と聞いてきている人までいる (参照)。なるほど、「やっしゃいらりー」 とも確かに聞こえる。人騒がせな歌だ。

"Cash-and-carry" というれっきとした英語 (「現金卸」 という意味) を知っている私が気になってしょうがないのだから、知らなかったらまるで 「魔法の呪文」 でしかなかろう。とくに "and" に相当する部分の発音が どう聞いても 「あん」 じゃなく 「あいむ」 とか 「あい」 とかにしか聞き取れないのは、最初の録音時に歌う方も録音する側もわかってなかったんじゃないかとしか思われない。

こんなような魔法の呪文が、よくまあ、こんなに長い間続いてきたものだと、感心するばかりである。ちなみに 「現金卸」 というのは、小売業者が直接店頭に行って、スーパーで買い物するように商品を選び、その場で現金払いして持ち帰るという卸売りの形態である。

小規模な小売店にとっては、かなり便利でありがたいビジネスだと思う。私が昔専門にしていたアパレル業界では 「エトワール海渡」 というのが結構有名だったが、もう誰も知らないだろうなあ。

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2017/08/28

「かばち」 と 「かまち」

「J タウンネット」 というサイトに、"横浜 「~じゃんとか言わない」 広島 「かばちたれって何?」 ... 地元の 「意外と使わない方言」 を聞いてみた" という記事がある。この見出し、ちょっとまずくて、横浜の 「〜じゃん」 は決して言わないわけじゃなく、実際は 「横浜だけじゃないじゃん」 ってことなのだが、「かばちたれ」 は確かに、何度広島に行っても聞いたことがない。

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愛媛県の 「ぞなもし」 は、漱石の 『坊っちゃん』 の中だけの言葉と思っていた方がよさそうだし、宮城県の 「だっぺよ」 というのもほとんど聞かなくて、完全に 「〜だっちゃ」 が優勢だ。「だっぺよ」 はむしろ茨城弁だと思う。妻が仙台出身で茨城在住の私が言うのだから間違いない。茨城に 30年も住んでいると、「〜だっぺよ」 がうつっちゃいそうで怖いほどだ。

さて、今日の本題の 「かばちたれ」 である。これ、映画の 『仁義なき戦い』 あたりから全国に知られた言葉だと思うが、「かばち」 というのは 「小理窟」 ってなニュアンスの言葉と理解している。「かばちたれ」 というのは、「つまらない小理窟をつべこべ言い立てる、口だけ達者なうっとうしいやつ」 というような意味だろう。

試しに辞書 (『大辞林』) を引いてみると、「① [「輔・頷」 などと書く] 上下のあごの骨。かまち。[新撰字鏡] ② [西日本方言] 生意気な口をきくこと。口達者なこと。また、その人」 とある。へえ、元々は 「上下のあごの骨」 という意味だったなんて、初めて知った。あごの骨を活発に動かすから 「口達者」 ってなことになったのだろう。

さらに注目すべきは、「かまち」 とも言うという点だ。「かまち」 は 「上がり框」 (玄関などの土間から家に上がるところの横木) などというように、家の造作を指す言葉である。ついでだからこれも 『大辞林』 で引いてみると、「【框】 ① 戸・窓・障子などの周囲の枠。② 床の間や床などの端にわたす化粧横木。上がり框・床框・縁框など」 となっている。

こうしてみると、「框」 も 「かばち (上下のあごの骨)」 も、いわば 「枠組み」 みたいなものだから、元は同じ言葉だったのだろうと想像される。そして 「かばち」 をフルに使うやつが 「口達者」 ということになるのは、なかなかおもしろい言葉の変化だ。広島の若年層がこの言葉を知らないというのは、なんだか残念な話である。

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