ブラジルで歌う「故郷」
日系ブラジル人の友達が何人かいる。彼らは、親あるいは祖父母の生まれた日本に、出稼ぎに来ているのである。
日系ブラジル人の愛唱歌は「故郷(ふるさと)」 。あの「うさぎ追いし かの山」の歌だ。
ブラジルで、彼らは必死になって生きてきた。そして、日系人同士が集まって旧交を温め、一緒になって歌う歌が、「故郷」なのだという。懐かしい日本の風景を思い浮かべながら、日本の心を歌うのである。
二世ともなると、日本語が覚束なくなってくる。三世になったら、もうほとんど話せない。日本に来て、初めて日本語を学ぶくらいのものだ。それでも、彼らは「故郷」なら歌える。
一度、彼らと一緒に「故郷」を歌った。しかし、最後まで歌えなかった。こみあげてくるものが大きすぎる。3番目の歌詞、「志を果たして いつの日にか 帰らん」などは、絶句である。
故・寺山修司に「マッチするつかの間海に霧深し身捨つるほどの祖国はありや」という歌がある。
祖国を霧の中のマッチ棒程度の物にしてしまうのは、国に残った者の感傷と気紛れである。こんなもので、彼らの帰るべき「故郷日本」を、壊してしまってはならないと思うのである。







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