人生は予定通りにはいかない
父は特攻隊上がりである。旧制中学の頃、易者に短命だと宣告され、「どうせ死ぬなら空で死のう」と、予科練に志願した。
ところが幸か不幸か、戦争末期で飛行機に乗るまでに至らず、生き永らえて、今年74歳である。
10代で終戦を迎えた父は、「おつりのような人生」に突入し、それでも「20歳になった時は、30歳までは生きられると思った」という。まあ、それはそうだろう。おかげで、私はこの世に生を受けた。
「30歳になった時は、40歳までは生きなければならない」と思い、「40歳になったら、50歳まではいけると思った」という。さらに「50歳を迎えたら、60歳までは大丈夫と思い、60歳になったら、70歳までは十分生き延びられそうな気がした」という。10年ずつ、おつりの人生が長引いてきた。
70歳になった時には「さすがに、あと10年生きられるような気はしなかった」そうだが、ここ 1~2年、母の具合が悪くなり、父が看病しなければならなくなった。「この歳になって、まだ死ぬわけにいかない境遇になるとは思わなかった」と父は言う。「10代で死ぬはずの予定が、狂いっ放しだ」
人間は使命を持って生まれてくるというが、その使命が残っているうちは、なかなか死ねないもののようだ。息子としては、いつまでも使命を持っていてもらいたいと思うのだが …… 。
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