大国と小国
「井の中の蛙、大海を知らず」 というが、大海の鯨だって、井の中を知らないのだから、どっちもどっちである。
大国は小国の苦しみを知らず、小国は大国の悩みを知らない。こうして、憎悪だけが増幅する。
現在の混乱を宗教戦争と言う人もあるが、私はそれはマユツバだと思っている。宗教はもっと寛容なものであって、戦いを起こさせるものではない。戦いを誘発するのは、いつだって経済要因で、宗教は後から付けられた勝手な理由である。
米国人は 「どうして自分たちは世界中から嫌われるのか」 と訝しく思い始めた。ある意味で気の毒な話だが、米国が嫌われるのは、世界で最も豊かな国だからである。金持ちはいつだって恨まれるのだ。
とくに今、世界の貧しい国では、若者を集めて訓練し、その鬱積を米国にぶつけて事を起こすためのシステムというものが構築されている。世界貿易センタービルで任務に殉じた消防士たちが英雄なら、飛行機でビルに体当たりしたテロ実行犯たちも、アラブ世界では英雄と称えられたのである。それを思うと悲しい。
憎悪は生産的な感情ではないから、当然にも貧困を呼び、その貧困ゆえに憎悪はさらに増大する。
宗教で憎悪を正当化してはならない。神は愛しか知らない。憎悪は人間が勝手に 「迷い」 の中から作り出した幻でしかない。その意味で、「悪の枢軸」 というものも、本当は幻だ。
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