「柿酒」 を飲んでおけばよかった
柿のおいしい季節である。私の田舎で採れる「庄内柿」は実にうまい。
実は、この庄内柿を「柿酒」にしてしまったことがある。この季節になると、いつも思い出して苦笑いする。
庄内柿というのは基本的には「渋柿」で、ブリキ缶にぎっしりと詰めたところに焼酎の霧吹きをして密封しておくと、1週間ほどで実においしい状態になる。
学生時代、田舎から庄内柿のブリキ缶が送られてきた。缶の蓋には、「××日に開けて食べるように」と書いてある。まだ 5日ほどある。私はその缶を棚に載せ、痛恨にもそのまま忘れ去ってしまったのである。
翌年の夏、暑い盛りにふと棚をみると、見覚えのあるブリキ缶が鎮座している。「柿だ!」私は隙間を防ぐためにびっしりと貼られたガムテープをはがすのももどかしく、蓋を開けた。
中身はどうなっていたかというと、柿の原型はまったくとどめず、柿色のネクターがドロドロになっていた。しかし、腐敗臭はまったくなく、逆にえもいわれぬ芳香である。つまり、半年近くを経てアルコール発酵が進み、「柿酒」と化していたのだ。
世に言う「サル酒」というのも、こんな風にできるのかと思い、飲んでみたい誘惑に駆られたが、なんだか気持ちも悪いので、泣く泣くトイレに流した。
ところが今になっても、一口飲んでおけばよかったと後悔しているのである。
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