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2003年1月22日

アビーロードの写真

ビートルズのアビーロードのジャケット写真を変造したポスターが販売された。何でもポールの右手の煙草が、コンピュータ処理で消されたらしい。

まるで、鬼ヶ島で鬼と仲直りした、桃太郎の最新版のようなお話だ。

私は嫌煙派だが、この処置は如何なものかと思ってしまう。ポールが煙草を指に挟んでアビーロードの歩道を渡る姿は、未成年に喫煙を勧める悪影響があるというのだが、そんなことを言ったら、昔の映像の多くは修正されなければならない。

ハンフリー・ボガード主演の「カサブランカ」なぞは、酒場の場面はすべて煙草の煙がもうもうとたなびいていて、今の感覚で言ったら息を止めないで歩くのが困難なほどである。しかし、当時はこれが普通だったのだ。

過去の時代性をもった芸術作品を現代の倫理尺度で判断したら、かなり多くのものが「不道徳」のレッテルを貼られてしまいかねない。それでは、我々の感覚自体が「薄っぺら」なものになってしまいそうだ。

桃太郎は、絵に描いたような勧善懲悪だからいいのである。カサブランカのボギーは、目を細めて煙草をくゆらすからいいのである。同様に、アビーロードのポールは、さりげなく煙草を指に挟んでいるから、当時のカッコよさを体現しているのである。

エリック・クラプトンは、バングラデシュ・コンサートで、吸いかけの煙草をギターのネックからはみ出した弦の端っこにちょいと突き刺していた。それがなんともカッコ良かったのである。今のクラプトンは、決してステージで煙草など吸わないだろうが。

ポリティカリー・コレクト(政治的に正しい)なものは、えてして作品としては陳腐なものになるのだ。

 

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