報道まで「エンベディッド」
近頃、「エンベディッド」 (embedded) という言葉が目に付く。「埋め込み式の」 といった意味である。
例えば、炊飯器などもマイコンを埋め込んだデバイスなので、 「エンベディッド」 の一族である。
「情報家電」 というものへの注目が高まるとともに、いろいろなチップやプログラムを 「エンベディッド」 した道具が増えてきて、今や、冷蔵庫からテレビ、クルマに至るまで、言われてみれば 「エンベディッド」 でないものとてない世の中になりつつある。
考えてみれば皮肉なものだ。コンピュータというのは、一台のハードの中にいろいろなプログラムをインストールして、いわば 「何でも屋」 を実現しようとしてきたのに、一方では、掃除機やらビデオ機にチップを埋め込んで、「一芸屋」 の復権を画策しているのである。
「エンベディッド」 という言葉は、こうした情報機器の分野の専門用語になったものと思っていたら、今度はイラク戦争の報道のあり方についても、「エンベディッド」 を採用しているという。
先のベトナム戦争や湾岸戦争などでは、現場での取材は厳選された少数に制限し、一般のメディアはそこから二次的に情報を得るという形になっていた。この方式を 「プール式」 という。
ところが、これでは情報が制限されて 「御用報道」 になるとして、今回は可能な限り多数の記者を、米軍の現場に 「エンベッド」 し、臨場感のある報道をしてもらうことにしているという。既に、多くの記者が軍艦の中で米軍兵士と寝起きを共にしているらしい。
軍隊と寝起きを共になんかしたら一蓮托生だから、妙な連帯意識ができてしまい、ますます 「御用報道」 になると思うのだが、案外それが狙いかもしれない。
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