エントロピーの法則と生命
エントロピーの法則というのがある。この法則によれば、ビッグバン以後の宇宙は、秩序から無秩序 (エントロピー) へと向かい、最後は熱的死を遂げる。
しかし、「生命」 というのは、このエントロピーの法則から自由であるように見える。
水の入ったコップが棚から落ちて粉々に割れ、水が床に広がる。これを 「エントロピーが増大した」 という。この粉々に割れたコップが再び結合してコップの形に戻り、こぼれた水を再び集めてもとの秩序ある状態になるということはありえない。
つまり、自然界の無生物においては、エントロピーは増大することはあっても、減少することはない。これを東洋では古くから 「形あるものすべては滅す」 と言う。
しかし、「生命」 はその本来相が 「秩序」 であるだけに、他の無生物とは様相が違う。外界が無機的であっても、皮膚一枚を隔てて、体内は確実にオーガニック (有機的) に保たれる。生命がなかったら、湯たんぽが冷めて外界と同じ温度になるように、人間も 「死」 を迎える。しかし、生命があるうちは、エントロピーは増大せず、傷も病気も自然に治るのである。生命とは偉大なるものである。
こんなことを思ったのは、今日、当サイトの BBS にも書いたように、桜の花が強風にも散らず、満開を保っているのを見たからだ。
桜は散りやすいものと思われているが、実は盛りを過ぎるまでは、どんなに突風が吹いても散らない。花びらは見るからにか弱い接点でがくと枝にくっついているのだが、これが見事に強いのである。「生命」 の強さといっていい。生命の強さは、散ることを拒否している。簡単には散らないのが、生命である。
どんなに無秩序に見えても、生命のあるところ、根底には秩序がある。秩序というのが気に入らなければ、「ネゲントロピー」(エントロピーの対極) と言えばいい。生命力が一見野放図に見えるのは、その表面的なエントロピーの度合いの高さが、あたかも熱量交換のように内部のネゲントロピーを保障しているのだと思える。
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