花いかだ
今日の収穫は、カーラジオでふと耳にした 「花いかだ」 なる言葉である。
風に舞う花吹雪。地面に散り敷かれた花びらが 「花むしろ」 なら、川面に浮かび連なるのは、「花いかだ」 。先人はなんと美しい言葉を残してくれたものだ。
のっけから耽美調の書き出しで、急に転調するのは心苦しいが、よく男子用のトイレに 「急ぐとも決して外に漏らすなよ 吉野の花も散れば汚し」 という歌が掲げてある。「なるほどなぁ、言えてるなぁ」 と思っていたのだが、実は、日本人の美意識にはその上を行くものがあったのだ。
よく、虫の音が、西洋人には雑音に聞こえ、日本人には妙なる音色に聞こえるというのが引き合いに出される。これは左脳と右脳の働きの違いによるらしいが、地面や川面に散ってしまった桜の花びらも、左脳オンリーで解釈すれば、ただの 「ゴミ」 である。
それを 「花むしろ」 と称し、「花いかだ」 と見るのは、単なる 「右脳解釈」 だけではないような気がする。これは、右脳による感覚的解釈と左脳のロジカル解釈との複合による 「ハイブリッド美意識」 といえるのではなかろうか。
危うく 「単なるゴミ」 になりかけている 「用済みの花びら」 を、既存のテーマである 「むしろ」 や 「いかだ」 に見立てて 「新しい美」 に昇華させてしまうというのは、これは日本人独特の繊細さのなせる技といえる。
吉野の花は、散ってもきれいなのであった。小便のしずくとは訳が違うのである。
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