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2003年5月11日

蕎麦を食う時の音

蕎麦は音を立てて食うものとされ、蕎麦屋の品書にも「盛大な音を立ててお召し上がりください」など書いてあったりする。

しかしそれについては、私はずっと「いかがなものか」と思っていた。何も「盛大な音」なんか出さなくてもいいではないか。

これに関して、かの杉浦日向子さんが「もっとソバ屋で憩う」 (新潮文庫)という本の中で納得できる解説をしてくれている。

杉浦さんによると、「ソバをズズッとあからさまな音をたてて食べるようになったのは、どうやらラジオ普及以降のことらしい」というのである。

蕎麦関連の落語をラジオで演じた際に、噺家がオーバーな音を立て、それを聞いた人たちまでが真似だしたというのが真相らしい。彼女は、従来わが国では概ね「濁り」を忌み、「つるつる」はいいが「ずるずる」は下品とされてきたので、普通は唇をすぼめて食べていたとしている。

しかし新そばの時期(11月から3月)までのみは、「聴くや善い」=「菊弥生」といって、新そばの香りを口腔から鼻腔に増幅するために、ズズッとすするのが公認されていたらしい。高座のそばは新そばの作法であったようだが、通年の慣習として定着してしまったと、杉浦さんは推理しておられる。

蕎麦を無音で食うというのも気味が悪いものだが、かといって盛大な音を立てるのが粋というわけでもないようなのである。ごく普通に慎ましい音をさせるのがよろしいのではないかと思う。

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