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2003年6月 4日

「銀髪鬼」の死

フレッド・ブラッシーが死んだというニュースが入った。この名前を知るのは、45歳以上か、相当のプロレス・マニアである。

「銀髪鬼」という異名で知られ、「噛み付き」 という最も原始的な「ワザ」で一世を風靡した。最高の「ヒール」だった。

力道山との一戦では、テレビ観戦していた老人があまりの残虐さに興奮してショック死した。1人や 2人ではない。全国で 6人も死んだのである。思えば純朴な時代だった。今ではプロレスでそこまで興奮する者はいない。

私はブラッシーという存在から、多くのことを知った。

最初に度肝を抜かれたのは、彼が前歯をヤスリで研いでいるシーンである。私は歯医者で歯を削られるだけで飛び上がるほど痛いのに、この男は一体何なんだ!? しかし、直に疑問は解けた。彼の歯は総入れ歯だったのである。

「噛み付き」というワザを際立たせるために、わざわざ総入れ歯にしてヤスリまでかけて見せる。プロのギミックとはいえ、大した根性である。

次の疑問は、少々込み入っている。力道山やジャイアント馬場は、なぜにあんなにたやすく額に噛み付かれるのかという疑問である。実際は、そう容易に他人の額になど噛み付けるものではない。

そもそも、相手の額に噛み付こうなどというのは、「人中」(鼻の下) という急所をわざわざ頭突きの射程距離に差し出すという、非常に愚かな行為なのである。

しかし、力道山やジャイアント馬場は、自分の額から血を流してまで、ブラッシーの「噛み付き」というワザの共同演出者として振舞うのだった。

私は、ブラッシーというのは本当は「いい奴」なのだと思った。そうでなければ、あんなに献身的に額を噛ませる奴などいない。果たせるかな、ブラッシーの素顔は、日本人妻を愛する紳士なのだった。

プロレスは相互の信頼の上に成り立った「受け」の美学であると知った。これは奥の深い真理であった。

 

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