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2003年7月30日

「がんす」と「のぅ」

映画 「たそがれ清兵衛」 をご覧になった方はお気付きのはずだが、庄内弁では、なんでも語尾に「~がんす」さえ付ければ丁寧な言い方になる。江戸山の手の「ざます」、鹿児島の「ごわす」同様、「ござります」の変化である。

「ござります」が「ございます」に音便化し、頭の「ご」が弱まって消えると「ざぁます」 「ざます」になる。さらに「ござんす」から変化したのが、相撲取りの「ごんす」だ (今どきの力士が「ごんす」なんて言うのは聞いたことがないが) 。

また、「ござる」が「おじゃる」に変化するという流れもある。鹿児島弁の「ごわす」は「おわす」の流れも混じっているような気がする。そして「がんす」は、「ござんす」の流れを脈々と引いている。

庄内弁では、「そうだ」は「んだ」と素っ気ないが、「そうです」は「んでがんす」と、ややニュアンスが加わる。

その否定形は、ちょっと高等技術になる。「そうじゃない」は単純に「んでね」 。 「そうじゃないんです」は、「んでねなでがんす」とも言うが、そう言ってしまうとややニュアンスがきつくなる。上品に言おうとすると、「んでがんすねのぅ」になる。

「んだ」の否定形「んでね」を直接的に言ってしまうより、「がんす」の方に否定の「ね」を付けて婉曲化するのである。「の」は関東弁の「ね」に相当するが、「のぅ」と言うと、ややおっとりした感じになる。庄内弁では、「の」と「のぅ」はどこにでも付く。

複雑化するのはこれ以降である。「がんす」という助動詞を否定してしまうので、「そうじゃないんですか?」と言うためには、もう一度 「がんす」 を重ねて、「んでがんすねなでがんすが?」になる。

「そうじゃないんではないですか?」は「んでがんすねなでがんすねが?」、それをおっとり言うと 「んでがんすねなでがんすねがのぅ?」 …… もう、言っている方もだんだん自分で何を言っているかわからなくなる。

とにかく、「がんす」と「のぅ」は、庄内弁の肝(キモ)である。それさえ把握すれば、初めて庄内に行って、土地の者が何を言ってるのかさっぱりわからなくても、それほどの疎外感を感じもせずに、ゆったりと漂うような時を過ごすことができる。

 

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