串本節で 「デッカンショ」
一度感動してしまった直後に、ふいに脱力してしまうと、その落差はものすごいものがある。
この感覚を、大分以前の社員旅行で、丹波篠山 (ささやま) に行ったときに体験した。それはそれは大変な脱力感であった。
宿に着き、宴会場で夕食となった。見ると、お膳の割り箸袋の裏に、土地の民謡、「丹波篠山節」 の歌詞が書いてある。別名 「デカンショ節」 ともいう、有名な 「あれ」 だ。
「よし、俺が歌う!」 歌の大好きな H氏が、ステージに立ち、アカペラで歌い始めた。
「♪たん~ばァ ささァやァまァ、お山のォ猿がァ …… 」
さすが元同志社大学グリークラブ、音吐朗々たるテノール。民謡独特のジャラジャラ感覚はないが、ドエラク格調の高い 「デカンショ節」 である。皆、「すごい声量やねぇ、さすがやねぇ」 と感心して聞いている。
「♪ …… 花の おえ~どォでェ~ェ 芝居すゥるゥ~」
ここで、お約束の掛け声、全員で盛大に 「♪ヨーイ ヨーイ、デッカンショ!」
…… あれ、なんだかちょっと違和感が …… 。だが、H氏は構わず二番目に突入する。
「♪デカンショ~、デカンショ~でェ 半年ィ 暮らァしィ …… 」 (相変わらず素晴らしいテノールで、皆、圧倒的に聞き惚れる)
「♪後のォ半年ァ~ 寝てェ暮ゥらァすゥ~」
再び全員で 「♪ヨーイ ヨーイ、デッカンショ!」 …… でも、やっぱりなんだか、取って付けたような、ぬぐい難い違和感。
「ちょっと、何だか変じゃなかった?」 と聞くと、K氏は、
「俺も、なんやおかしい思て、最後の最後で気付いたんやけど、今のは串本節のフシやったわな」
…… ・! 串本節ィ!! あの 「ここは串本 向かいは大島 中を取り持つ巡航船」 というやつかぁ!! 「そやそや」
つまり、H氏、串本節のメロディで、デカンショ節を音吐朗々と歌ってしまったのだ。
「道理で、『♪ ヨーイ ヨーイ、デッカンショ』 というよりは、どちらかというと、『♪ アラ ヨイショ ヨーイィショ ヨイショ、ヨーイショ ヨォーイショ』 と付けたくなったわ!」
「そら、そやわなぁ」
あまりにも見事で格調の高いテノールだったため、誰もフシの間違いに気がつかなかったのである。この時の脱力感は、今でも語り草となっている。
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