「腑に落ちる」
「腑に落ちない」という日本語がある。表面的には辻褄が合っているが、どうも納得できないというようなニュアンスだ。
理解というのは理屈でできるが、最終的には「腑に落ち」て「身体化」されるところまで行かないと、「納得」はできない。
<国語辞書をみると、「腑に落ちない」という用例は載っていても、「腑に落ちる という言い方は見当たらない。だが私は「腑に落ちる」という実感を大切にしたいと思っている。
理屈を積み重ねることによる理解は、そのプロセスをきちんと踏まないと得られない。しかし「腑に落ちる」ということによる「納得」は、ある日突然訪れる。それは直観的なものだからだ。
仏教の教義を網羅した『大蔵経』を読破したとしても、悟れないものは悟れない。しかし、たった一言で悟りを開くものもある。
昔、中国で若い新参の僧が名高い逍州和尚に指導を仰いだところ、「朝食はとったか」と聞かれた。「とりました」と答えると、「それでは、食器を洗え」 と言われた。
若い僧は、それだけの問答で悟るところがあった。 「飯を食ったら、器を洗う」という当たり前の行為の中に、宇宙森羅万象の真理を見出したのである。これが「腑に落ちる」ということだ。
そこに至るまでは参禅し、作務をするという日常の積み重ねがあったのである。ある種の「準備」が整うと、インスピレーションは瞬時に与えられる。
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