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2003年8月 6日

そばの食い方、柏手の打ち方

落語の枕に、江戸っ子の粋人が臨終の間際に、「一度でいいから、汁をたっぷりつけてそばを食いたかった」 と言うのがある。

いかにもありそうだが、実際にはあまり汁を付けすぎると、せっかくのそばの香りが消されて、決してうまいものではない。

本来は、そばの食い方などというのは自由であって、人それぞれ好きなように食えばいい。とはいいながら、これだけは控えた方がいいという悪例が少々ある。

その最たるものは 「二見浦」 (ふたみがうら) という食い方だ。ざるやせいろから、そばをぞろぞろと引きずって、そのまま卓に置いたそば猪口に突っ込むと、ざるやせいろと猪口が、ぞろりと引きずられたそばでつながってしまう。まるで、二つの岩を注連縄 (しめなわ) でつないだ 「二見浦」 のようなので、こう呼ばれる。

本当の 「二見浦」 はきれいだが、そばを食うのにこれをやられると、美しくない。前かがみで髪の毛をかき上げかき上げ、「ズルッ、ズルッ」 とすするようになる。

そばを食うときの基本は、要するに、そば猪口をちゃんと左手で持つことである。そして、右手の箸で手繰り上げたそばの 「下端から」 汁につけていただきたい。このやり方さえ守れば、あとはどっぷり浸そうが、かき回そうが、どうとも自由である。

ついでなので、もう一つ。神社で参拝する際の 「柏手」 (かしわで) の打ち方である。最近何だか、日本人の柏手の打ち方が妙ちくりんだと思っていたのだが、どうしておかしいか、やっとわかった。

多くの人は、だらりと下がった位置にある両手をふわりと上げて、そのまま 「ペチン、ペチン」 とやってしまうのである。これだと、順番待ちで後ろから見ていると、かなり間が抜けて見えるし、音も大抵格好悪い。

柏手を打つ際は、背筋を伸ばして、いったん両手を胸の前で軽く合わせていただきたい。この時、肘を曲げて合掌のように胸に近付け過ぎると、手を開いたときに 「あらまぁ」 なんて言ってる漫画みたいな姿になって、形がよろしくない。少し前方に差し出すぐらいの方がいい。

両手を軽く合わせたら、左指先が心持ち前方に出るくらいに右手を少し引いて
、「ポンポン」 と打つのである。こうすると、音も 「ペチン、ペチン」 にならずに済む。試していただきたい。

あぁ、なんだか私も、口うるさいジジイのようになってきた。

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