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2003年8月17日

無理偏にげんこつ

昔、某団体に勤務していた頃、元琴風の尾車親方の講演会を催したことがある。親方はとても話し上手で、好評だった。

2~3日後、事務局に電話が入った。「講演を聞いた者だが、いくら調べてもわからないので、お聞きしたい」 という。

「どんなことでしょうか?」
「『あにでし』 という字は、どう書くんですか?」
「それは兄弟の 『兄』 に、お弟子さんの 『弟子』 だと思いますが」
「でも、尾車親方の言っていた 『あにでし』 は、別の字でしょう」
「はぁ?」

ここで、私も一瞬、頭に思い浮かんだ。そういえば、尾車親方は講演の中で、「相撲の世界では、『無理偏』 に 『げんこつ』 と書いて、『兄弟子』 と読ませるくらいですから …… 」 と、おっしゃっていた。ほとんどの人は冗談として聞いたはずだが …… .。

「漢和辞典で調べてみたんですが、『無理偏』 というのが、いくら調べてもないんで、どんな字か教えていただきたいと …… 」

あれは相撲界の体質 (「『無理偏』 に 『げんこつ』 と書いて、『上官』 と読ませる」 という軍隊バージョンもある) を言う有名な冗談なのだと説明したのだが、この人は結局わかってくれなかった。

「だから、それが一体どんな字なのか、知りたいんです」 というわけだ。思い込みと言うのはコワイ。

それから、こんな話もある。

大学時代の友人が、ある人に 「達筆ですねぇ」 と誉められた。謙遜のつもりで、「いやぁ、私のは金釘流ですから」 と言うと、相手は、「ほほぅ、カナクギ流ですか。道理で …… 」 とますます感心してしまったので、彼は何も言えなくなってしまった。

世の中には真面目すぎる人がいるので、注意が必要だ。

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