「赤とんぼ」 のアクセント
「赤とんぼ」 という言葉のアクセントというのは、実は結構な問題なのである。
普通は 「とんぼ」 の 「と」 にアクセントがあるのだが、NHK のアクセント辞典では、最初の 「あ」 の部分にアクセントがあるらしい。「アかとんぼ」 である。
山田耕筰は、日本語のアクセントと歌の旋律を極力一致させようと試みた。そして彼の作曲した 「赤とんぼ」 では、その旋律は 「アかとんぼ」 である。彼の活躍した時代、東京ではそのようなアクセントで発音していたからという。だから、東京山の手の言葉を基本とする NHK でも、「あ」 にアクセントが付くことになっているようなのだ。
ではなぜ、東京でも現在のように 「あかトんぼ」 になってしまったのか。多分、他の色名のつく言葉のアクセントに準じることになってしまったのではないかと思われる。
例えば、「赤鉛筆」 は 「アかえんぴつ」 ではなく 「あかエんぴつ」 だ。他の色にしても、「白装束」 は 「シろしょうぞく」 ではなく、「しろショウぞく」 だし、「黒猫」 にしても 「クろねこ」 にはならない 。
それから、ちょっと深読みすると、「あかトんぼ」 は、実は関西アクセントに近いのである。お江戸は徐々に上方文化に浸食されているような気がする。そういえば、最近は東京でも、自分のことを 「うち」 と呼ぶ若い子が増えているらしい。(ただし、上方流の 「ウち」 ではなく、平板アクセントになっているようだが)
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