お役所言葉の理屈
役所言葉がわかりにくいのは周知の事実だが、それを女子大生が改めて指摘したら、話題になってしまったというのは笑える。
女子大生グループが、「お役所文章にもの申す !!」 のタイトルで、フリーペーパー 「かれっじ☆まがじん」 に載せたものだ。
「えんぴつむすめ」 という女子大生グループの 5人が各省庁の 「白書」 などを読み、いかにわかりにくかったかを記事にまとめたのである。その話が農林水産省に伝わり、同庁の白書作成担当者が、その女子大生グループを招いて、意見を聞いたらしい。
「農業白書」 には、1センテンスが 287文字もあり、その中に助詞 「の」 が 17回も出てくるという、すごいケースがあったようだ。
(ちなみに、このコラムの書き出しから前段の 「あったようだ」 までが、ちょうど 287文字で、私は 5センテンスで書いている。これだけの字数を 1センテンスで書き通すだけの持久力と厚かましさは、私にはない)
女子大生たちの意見を聞いて改善の姿勢を見せたことで、農水省は少々株を上げたらしい。しかし私としては、自分たちの文章のどこがまずいのかを女子大生に聞かなければならないほど、農水省のお役人はヤキが回ってしまったのかと、驚いてしまったのである。わざわざそんなことをしなくても、普通に読めば、誰だってわかるだろうに。
大抵のお役所文章というのは、よくよく検証すると、確かに理屈だけは通るようにできている (たまに通らない悪文もないではないが)。くだんの 287文字にわたるセンテンスだって、よく読めば論理的には破綻なく首尾一貫してしているはずで、さっぱりわからない文章なんかではないと思う。だから、執筆者にしてみれば 、「一体何がいけないというのだ」 ということになるかもしれない。
しかし、理屈さえ通っていればわかりやすいだろうというのは、迷信である。世の中には、そもそもからして 「わかりにくい理屈」 というのがあり、法律や行政の理屈というのは、その典型なのだ。そのまま書いたら、わかりにくくなるのは当たり前なのである。それらをわかりやすく書いてこそ、きちんとしたライターというものだろう。
お役人だって、わかりやすい文章を書こうと思えば書けないはずはない。その能力を発揮させないのは、「お役所という連綿たるコンテクスト」 なのである。
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