「メグミルク」 の安易さ
雪印乳業と全農の牛乳事業を統合して誕生した "MEGMILK"(メグミルク) が販売不振で 4工場を閉鎖し、社長も辞任だそうだ。
元々、「全農は間違ったな」 と思っていた。「雪印」 のブランド隠しをしながら、マーケットだけはいただこうという意図が見え見え過ぎて、とても安易に感じられた。
展開開始当初は、パッケージデザインなど、マーケティング論を賑わすサイドストーリーが豊富で、一時的に注目されたが、案の定、長続きしていない。おしゃれなパッケージも、もう手あかが付いてきたようだ。
そもそも、どこのスーパーに行っても、牛乳で売れているのは、一番値段の安い地元ブランドと決まっている。1リットルパックで、20~30円も値段が違うのだから、ローカルブランドが強いのは当たり前だ。
「メグミルク」 のプロジェクト概要を聞いた時、商品は全然違うが、少し前のマツダの戦略を連想した。あの自動車メーカーのマツダは、バブル全盛期、「ユーノス」 だの 「オートザム」 だのという耳慣れないディーラー・ブランドで車を売ろうとして、見事に失敗した。
あれは、目新しいブランドで目先を変えようとしたのだが、実はメーカー自身が、「マツダ」 という従来の自社ブランドへの自信と誇りを喪失したためではなかったか。自分で自分の 「ブランド隠し」 をしたわけだ。発端にそうしたネガティブな姿勢が見え隠れしたこともあり、この戦略は結局、ユーザーには受け入れられなかった。トイレットペーパーや Tシャツじゃあるまいし、自動車はストア・ブランドで売れるような軽いアイテムではないということに、当の自動車メーカーが気付かなかったのだ。
今回のメグミルクも、ストアブランドではないが、いわば、ディストリビューター・ブランドである。
牛乳は元々、ストアブランドでも売れる 「軽いアイテム」 だったのに、雪印の大チョンボのせいで、「メーカーの信頼性」 という 「寝た子」 を起こしてしまった。その雪印の流れを汲む会社が、メーカー隠しと受け取られかねない戦略を取ったのは、選択として間違いだった。消費者は 「素性のはっきりとした牛乳」 を求めていたのに。
目新しいブランドで製造者の素顔をくらますような安易な戦略は、いつの場合も長続きしないのである。
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