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2004年2月 5日

駆け引きさせて、突然ぶん殴る

イラク攻撃の根拠となった 「大量破壊兵器」 の存在に関する独立した調査委員会が、米、英で設置されることになった。

ただ、私としては 「イラク攻撃が正しかったか、否か」 との問いを発するよりも、「サダムの戦略は完全に失敗だった」 という、既に下された結論を、より重視すべきだと思っている。

本当に大量破壊兵器が存在しなかったとしたら、サダム・フセインの戦略は、完全に 「はったり」 に立脚したものだった。実際に 「ない」 ものを、口では 「ない」 と言いながら、実はいかにも 「あるかもしれない」 ように見せかけるという高等 (?) 戦術で世界を手玉に取ろうと目論んだのだろうが、それは結論として完全に破綻してしまったのである。この結論こそが、サダムに突きつけられた解答である。

サダムが多分に自己陶酔しながら展開した高等な 「駆け引き」 は、実はあまりに手順が面倒くさすぎて、単純馬鹿には通じなかった。高等なゲームに付き合うほどのソフィスティケーションを、英米の首脳は持ち合わせていなかったのである。要するに、サダムは英米の 「知性」 を過大評価してしまったわけだ。もうすこしポーカーゲームに付き合ってくれると思っていたのに、いきなりテーブルをひっくり返されて、ぶん殴られてしまったのだから。

中近東からアジアに至るまでの 「駆け引き」 で世渡りする手法は、だんだん通じなくなってきた。世界のデフォルトになってしまった西欧的手法は、「ネゴ」 はするが、それでずるずるといつまでも引き延ばしていくのを嫌うところがある。かなり 「いらち」 なのである。

21世紀の米国の対外戦略は、さんざん 「駆け引き」 させて、「いい気」 にさせ、突然豹変してぶん殴るというもののような気がする。要するに、現代は 「はったりと駆け引きのみ」 という外交手段は通用しにくい世の中になったということだ。リビアのカダフィは、敏感にそれを察知して 、従来路線を放棄した。北朝鮮も、あまり 「かけひき」 のみに血道を上げていると、とんでもないことになる。まぁ、中国という一筋縄でいかない国が絡んでいるので、そうそう無茶もできないだろうが。

いずれにしろ、米、英の調査委員会が、自国にとって完全に否定的な結論を出すはずがない。「今度はもう少し気を付けようね」 的なものになるだけだ。その本当の意味は、「次は、もっともっともらしい理由をつくりましょうね」 ということになる。

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