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2004年2月15日

「きつね」 と 「たぬき」 と 「はいから」

牛丼チェーン店が、相次いで牛丼の取り扱いを休止させている。新聞やテレビの取り上げ方をみていると、「日本人って、そんなに牛丼が好きだったのか?」と思うほど、センセーショナルである。

その中で、関西ベースの「なか卯」は、それほど悲壮感がなくて、救われる。

なか卯が、比較的のほほんと見えるのは、元々「牛丼」と「うどん」の二枚看板できたからだろう。「牛丼がなくてもうどんがあるさ」というわけだ。ところで、なか卯のメニューに「はいからうどん」というのがある。私はこれがどんなうどんなのか、知らなかった。知ったのはつい最近のことである。

大阪で「油揚げ」の乗っかったうどんを「きつね」というのは、関東と変わらない。しかし、同じ「油揚げ」を乗せたものでも、麺がそばに変わると、「たぬき」になる。だから、大阪の人間は、東京のうどんそばやに入り、「きつね」と注文して「そばですか? うどんですか?」と聞かれると、「こいつ、馬鹿か」と思うらしい(関西人の「馬鹿」は「阿呆」よりずっとひどいランク) 。「きつね言うたら、うどんに決まっとるやんか」

要するに、同じ「油揚げ」が乗っていても、うどんなら「きつね」、 そばなら「たぬき」なのである。麺の色からの発想らしい。だから、わざわざ「うどん」だの「そば」だのと言わなくてもいいらしいのだ。

そして、関東でいうところの「たぬきそば・うどん」は、「はいからそば・うどん」になるらしいのである。マトリックスで示すと、以下のようになる。

 
種/麺 うどん そば
東京での呼称 大阪での呼称 東京での呼称  大阪での呼称
油揚げ
(おあげ)
きつねうどん きつね(うどん) きつねそば たぬき(そば)
揚げ玉
(天かす)
たぬきうどん はいからうどん たぬきそば  はいからそば

ちなみに、関東で揚げ玉の乗ったものを「たぬき」と称するのは、天ぷらの「種ぬき」から来ているらしい。また、関東の「揚げ玉」は、関西では 「天かす」になる。関東では「かす」というのは忍びなかったもののようだが、大阪ではドライに「かすはかすやんけ」ということになるもののようだ。食に関しては、大阪人は案外贅沢である。

さらにややこしいことには、大阪ではただの「素うどん」や「かけそば」に天かすかけ放題という店もあり、それ故に、「はいから~」とも言わず、単なる 「うどん・そば」であるという説もあるようだ。「天かすごときに金を払えるか」という人もある。確かに、大阪で「素うどん」を頼むと初めから天かすの入っていることも結構ある。この辺まで来ると、かなり奥が深い。

 

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