編曲と著作権
佐藤眞・東京芸大教授の作曲による現代クラシック曲を、ジャズバンド PE'Z (ペズ) が演奏録音したことに佐藤氏ががクレームを付け、ペズは 「不愉快な気持ちを与えたなら」 と、CD出荷停止と今後演奏しないことを決めたという。(こちら)
面倒なところのある問題である。
問題の曲は昨年11月発売された 「大地讃頌」 (東芝EMI) というもので、ペズのメンバーが 「深い感銘を覚えた」 として独自にアレンジし、CD 化した。もちろんジャズバンドのことだから、アドリブもたっぷりだろう。
ところが、作曲家の佐藤眞先生は、そもそも自身の作品について一切の編曲を認めていない方なのだという。そこで、ペズとしては 「片思いでした」 ということで、訴えに応じたらしい。大人の対応だと思う。
あの有名な 「ホワイト・クリスマス」 という曲は、一切の訳詞を認めないということで知られている。あの曲の良さは、英語で歌われてこそ最高に発揮されるという信念からきているのだろう。それでも、編曲までは否定されていない。
編曲を認めないということは、オリジナルの楽譜通りに演奏されることが求められているのだろうが、それでも、曲の解釈によって、微妙な演奏の違いというものは必然的に生じる。解釈と編曲の境目とは、一体どの辺にあるのだろう。
あるいは商業目的でない編曲だったとしたら、どうなるだろう。個人的に好きに編曲して楽しむことまでは、クレームはつけられないはずだ。
実は、私もその昔、シンガーソングライターとして、ライブハウスで自作の曲を演奏していたことがある。その私としては、自分の曲がどのようなスタイルで演奏されようと、著作権さえ正当に認めてもらえれば、文句は付けられないという立場である。
どちらかと言えば、いろいろな形で演奏してもらえるほど、自分のアイデアの発展形を示してもらえるのだから、楽しいことだと思う。実際に、自主制作盤で私の曲のカバーをしたグループもあって、それはそれでおもしろいと感じた。
個人的な感想を言えば、「佐藤先生はずいぶん頑固な方だなあ」 ということに尽きるのである。
| 固定リンク
「音楽」カテゴリの記事
- 米国の「日本ブーム」を音楽視点から見ると(2024.09.15)
- 高石ともやさん、ありがとう(2024.08.19)
- 『ドレミの歌』の「シ」と "tea" の謎が解けた(2024.06.12)
- 永遠の『おどるポンポコリン』(2024.05.25)
- シルヴィ・ヴァルタンは、ラクダに食われていたのだ(2024.04.13)
コメント