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2004年3月11日

「可能性」 はない?

神戸児童殺傷事件で関東医療少年院に入所していた 「加害者男性 (21)」 が、すでに仮退院したと報道された。

関東地方更生保護委員会の小畑哲夫委員長は 「再犯の可能性はないと判断した」 と仮退院の許可理由を述べたそうだ。この判断が間違っていないことを望む。

一方で、「再犯の可能性はない」 などと言い切っていいのかなぁと、疑問も感じる。誤解しないでいただきたいが、私は仮退院した男性が再び罪を犯すだろうなどと言っているわけではない。ただ単純に 「可能性はない」 などと言い切っていることに、「すごいなぁ」 と驚いているのである。

「まさか、あの人が」 と思われるような人が、時として凶悪犯罪を犯すことがある。可能性としては、どんな人間でも罪を犯す可能性は 0 パーセントではない。普通の人間ですらそうなのだから、このほど仮退院するという男性に関して、単純に論理的な問題として 「可能性はない」 などは言えないはずだいうのが、ごく普通の考え方だろう。

ドイツ人と結婚した女性に聞いた話だが、日本の天気予報で 「降水確率 0 パーセント」 と言い切るのを、論理性を重んじるドイツ人は驚くそうである。確かに、論理で突き詰めれば 「0 パーセント」 というのはあり得ないだろう。どんなに強い高気圧に覆われることが確実だとしても、多少の紛れがあるかもしれないではないか。

実際に、「降水確率 0 パーセント」 と言っていたのに、雨に降られたことが一度ならずある。そんな場合でも、「ごめんなさい」 で済むかもしれないが、凶悪犯罪となると、そういうわけにも行かない。

ただ、今回の場合は、単純に論理性を重視して 「可能性は非常に低い」 などと言ってしまっては、「万が一の可能性があるものを世の中に出すとは何事だ」 ということになりそうだ。実際には 「万が一以上の可能性」 のある者が、その辺にごろごろいるのだが。とはいえ、ある種政治的な判断で、仮退院という方向性がある以上、「再犯の可能性はない」 と言わざるを得ないのかもしれない。

重ねて言うが、今回の判断が間違っていないことを望む。そして、その男性がきちんと更生して罪を償うことを祈るのみである。

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