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2004年4月19日

中国語の便利さ

昨日の中国語ネタをもう少し続けよう。以前広東語の通訳をしてくれた女性によると、中国語は、世界一手っ取り早く意志を伝えられる言語だそうだ。

「考えても見てください。『雨天順延』 を英語で言ったら、どんなに面倒か」
なるほど、確かにその通りだ。

英語では「延期」を "put off" あるいは "postpone" という。手持ちの辞書で「順延」を引くと、やはり 同じ 2語が出てくるが、これは正確に言えば、かなり怪しい。「延期」と「順延」は違うのだ。英語では「順ぐりに延期」という 「ニュアンス」は、一言では表現しにくいように思える。

しかし、それでは「順延」と一言で言える中国語が本当に便利かというと、それも怪しい。一口に「順延」といっても、具体的にはどのように延期するのか。そのあたりは、わかったような気にさせられて、その実、かなり曖昧なのだ。

要するに、「順延」というのは、「意味」というよりは「ニュアンス」なのだということだ。

例えば、日曜日に予定されていた小学校の運動会の当日が雨だったとする。子供が学校から持ってきた「お知らせ」をみると、「雨天順延」と書いてある。一見しただけでは、翌日になるのか、あるいは翌週の日曜になるのか、よくわからない。

そして、後ろにカッコ付きで「当日は月曜日の授業を行い、翌日に実施します」などと、かなりめんどくさいことが書いてあったりする。

それでは「翌日も雨だったら、どうなるのだ?」という疑問が生じるが、それに関しては何の説明もない。純粋に論理的に考えれば、「順延」という基本方針と「翌日」という付加条件に沿って、自動的に翌々日に実施されることになるはずだ。ということは、翌々日も雨だったり、グランド整備が必要だったりしたら、これまた自動的に三日後になるのだろう。

しかし、その解釈で本当にいいのか。経験則からいうと、こういうことは、なかなかそうは運ばない。「それではいっそ、父兄の参加しやすい次の日曜日に …… 」なんていうどんでん返しがつきものなのだ。「意味」というよりは「ニュアンス」と言ったのは、そういうことである。

結局は当事者に「お伺い」を立てて確かめなければならない。そして、聞かれた方でも、実はあまり明確ではなく、その都度ああだこうだと相談する。それでもまとまらないことが多いので、一番偉い人に「一任」ということになり、最後は鶴の一声で決まる。

私は、中国語というのはスローガン主義の国家運営をするには、とても都合のいい言語であると思う。なんとなくわかったような気がして、皆で勇み立って突っ走ることができる。そして、要所要所では、「法治主義ではなく人治主義」といわれるように、偉い人の解釈や裁量で、どんでん返しだって可能だ。

 

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