« 「子どもの日」 と男女差別 | トップページ | 年金システムの欠陥 »

2004年5月 7日

「ゑ」と "Ye"

通貨の 「円」 を "¥" と表記するのはなぜかと聞かれると、「円」の歴史的仮名遣いは「えん」ではなく「ゑん」だから、"Y" なのではないかと答えてきた。

しかし「『ゑん』ならば "Yen" ではなく "Wen" だろう」 と突っ込まれないかと、内心ヒヤヒヤしていたのである。

確かに「ゑ」は「ヤ行」ではなく、「ワ行」に連なる字である。今でこそワ行は「わいうえを」だが、歴史的には、「わゐうゑを」だったわけだから、「ゑん」を "yen" と表記するのは間違いで、"wen" でなければならない。

何故に "wen" ではなく "yen" になったのか、考えるたびに居心地の悪い思いをしてきたのだが、どうせ現代仮名遣いにはない字でもあるし、いつの間にか、なぁなぁに済ませて頬被りをしていた。

ところが、"yen" よりも気にかかるのは、「ヱビスビール」である。「ヱ」は「ゑ」のカタカナだから、"WEBISU BEER" と表記されてしかるべきなのだが、瓶のラベルは "YEBISU BEER" である。これは通貨の表記よりもずっと違和感がある。

今日、ようやく思い立って調べてみると、「雑学の部屋」というサイトで、

円が 「YEN」 と表記されるようになった理由は、幕末以降の日本に影響を与えた外国人(英語国民)達が、「江戸」を「Yedo」などと、「え」を「ye」と表記していたことや、"ヘボン式"で有名なヘボンが、"和英語林集成" で「え」や「ゑ」で始る全ての日本語を「ye~」と表記してしまったことにあります。

と説明されていた。なんということだ!

「江戸(えど)」も "Yedo"、「円(ゑん)」も "yen" では、無茶苦茶だ。 「え」と「ゑ」の違いなんてお構いなく、なんでもかんでも "ye" と表記していただけだったのか! そうした外国人の明らかな間違いを、ハイカラ気取りで真似しただけの話だったとは!

「え」と「ゑ」の発音は歴史的にはまったく違っていて、それぞれ "e" "we" と発音されていたのだが、江戸時代に至っては、その違いは消え去り、ほぼ同じ発音になっていた。だから、外国人にそれを区別しろと言っても、確かに無理な話ではある。

さらに、日本語の「え」は 英語の "e" ほど口を開かないし、江戸っ子は「え」と「い」の発音が曖昧だったから、外国人の耳には、 "ye" に聞こえたのかもしれないなぁ。

要するに、"¥" も "YEBISU BEER" も、旧仮名とはまったく関係がない次元の話なのであった。今までの居心地の悪い思いは、一体何だったんだろう。悩んで損した。

 

|

« 「子どもの日」 と男女差別 | トップページ | 年金システムの欠陥 »

言葉」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 「子どもの日」 と男女差別 | トップページ | 年金システムの欠陥 »