人名漢字拡大の怪 その4
人名漢字拡大案については、当コラムでも過去 3回取り上げて、もうほとんどケリがついたものと思っていたら、また呆れるようなニュースである。
パブリックコメントを募集した結果、削除要望の対象は追加案の 8割超の 500字近くに上ることがわかったというのである。
(参照) Yahoo ニュース 追加される漢字(PDFファイル) - 法務省
上記のリンクから追加される漢字の案にアクセスできる。まぁ、確かに、屍、淫、糞の他にも、腫、尻、塞、疹、蚤 ・・・ など、別に人名漢字として増やしてもらわなくても、どうせ使いたくもない字が多く含まれてはいるが、500字以上の削除要望があったというのは、とんだ過剰反応である。
そんなことを言い出したら、これまでの常用漢字の中にだって、人名にふさわしくない漢字は腐るほどあるのである。実際のところ、人名に使いたい漢字なんて、全体から見たら、どうせほんの一部でしかない。
だから、話を基本的なところに蒸し返してしまえば、「人名」に使える漢字として拡大提案するにしては、あの案は無責任すぎたのである。
法制審は 23日の人名用漢字部会で、集計結果を踏まえて追加案を再検討するという。批判の集中した漢字を削除するかどうかが案件となるのだろうが、「『人名にふさわしい漢字』 をどう判断するか、基準をめぐって調整に手間取ることも予想される」と報道されている。
ここまで来ると、ボーダーライン上の漢字の取り扱いが微妙なのだろう。例えば、「腺」とか「腔」なんて、それ自体はとくに没イメージの漢字ではないが、何となく「ムフフ」になってしまいそうな可能性もないではない。
どちらか一方を削ったりして、「どうして『腺』は OK なのに、『腔』はダメなのか」 なんて問いつめられたら、誰も答えられはしない。なんともややこしいことになってしまったではないか。
こんなことなら、初めから縁起悪い系と下ネタ系を除いておいて、さりげなく提案するか、元々とくに要望の多かったいくつかの漢字に限定して提案するとか、うまくやっておけばよかったのに。
個人的には、要望の多かった漢字を認めるという、「明確なニーズ対応」にしておくのが、一番自然だと思う。役人と学者の考えで、ニーズもないところまで妙な拡大に走ったのが、そもそもの間違いである。
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