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2004年7月28日

拝啓 敬具

高校 3年生の全国一斉学力テストで、手紙の書き出しの「拝啓」を正しく書けた生徒が 2割にとどまっていたため、国立教育政策研究所は「社会人として必要な言語能力の育成」が必要だと指摘している。

そんな指摘をしても、今さらのような気もするのだが。

テストの問題は「敬具」で終わる手紙文を示し、書き出しの空欄を埋めることが求められたのだが、正解の「拝啓、謹啓」などを書けたのは 22.4%だったという。平仮名で「はいけい」などとしたのが 10.1%、「拝けい」などの交ぜ書きが 2.4%だった。誤答では、「拝敬」などの誤字が 31.1%、前略、冠省(かんしょう)などが 6%あった。

こう言っては何だが、今時の高校生が「拝啓」を「拝敬」と間違えたところで、別に驚くに値しないと思う。だって、彼らの手紙文は、決して 「拝啓 - 敬具」や「前略 - 草々」なんて言葉を使わないのだもの。知らなくても全然不都合がない。

漢字の表記は別として、3人に 2人が「はいけい」であると知っていただけマシだという気がする。逆に間違いとはいえ「冠省」なんて言葉を知っていたという方が驚きだ。

「社会人として必要な言語能力」と言うが、団塊の世代以後のほとんどの社会人だって、個人的な手紙では「拝啓 - 敬具」なんて使わないだろう。こんなのを使ったら、他人行儀で、かえって違和感がある。

今時こんな言葉を使うのは、いわゆる「ビジネス文書」ぐらいのものではなかろうか。私だって、そんな文書は社会に出て初めて書いた。しかも社会人になって何年か経ったらビジネス文書はワープロ打ちが当たり前になったので、ここ 20年ぐらいは「拝啓」と「敬具」なんて手書きしたことがない。

しかも今時のワープロでは、「拝啓」と入力したら、末尾は自動的に「敬具」になるようにできている。便利すぎて、手書きができなくなると嘆く人もいるだろうが、そもそも手書きではそんな言葉を使わないのだから、別に構わないような気もする。

「時代遅れになりつつある常識」として、「いざとなればいつでも使えるよ」という程度に知っておくぐらいでいいではないか。

私の妻は古くからの友人たちと、しょっちゅう手書きの手紙のやりとりをしているが、「拝啓」で書き出すなんて、意識の外にあると断言してもいい。「拝啓」 始まり「敬具」で終わる手紙なんて、一生に一度も書かないという人だって、そう珍しいことではないだろう。

現代の 「社会人として(本当に)必要な言語能力」というのは、そんな単純な決まり文句を覚えることより、もうちょっと別のところにあるのではなかろうか。

 

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コメント

拝啓 良い 勉強に なりました。 中略 勉強しないと えらくなると思って 勉強します。 猛勉強して ノ-ベル賞を 貰います。敬白。

投稿: 岡田健一 | 2014年9月 4日 07:32

岡田健一 さん:

ご苦労様です。健闘をお祈りします。

投稿: tak | 2014年9月 4日 12:20

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