「和」「邦」「日」「国」 の使い分け
永六輔さんがお昼の番組でこだわっておられるテーマに、「和」と「邦」がある。
「和菓子」とはいうが、「邦菓子」とはいわない。一方、映画では「邦画」といい、「和画」とは言わない。使い分けの区別はどこにあるのだろうというのである。
辞書で見つかった言葉を、ちょっと分類してみた。(対になる言葉も並べて表示)
「和」
【「和 - 漢」 の流れ】和歌/和詩 - 漢詩、 和語 - 漢語
【「和 - 漢(唐) - 洋」 の流れ】和学 - 漢学/洋学、 和書 - 漢書/洋書、和風 - 唐風/洋風
【「和 - 洋」 の流れ】和学 - 洋学、 和楽 - 洋楽、 和菓子 - 洋菓子、 和裁 - 洋裁、和算 - 洋算、 和紙 - 洋紙、 和式 - 洋式、 和室 - 洋室、 和酒 - 洋酒、和食 - 洋食、 和船 - 洋船、 和装 - 洋装、 和針 - 洋針、 和服 - 洋服
【その他】和文 - 英文/仏文など、 和名 - 学名、 和訳 - 英訳/仏訳など
「邦」
【邦 - 洋 の対応関係があるもの】邦画 - 洋画、 邦楽 - 洋楽、 邦舞 - 洋舞
【「外国」 に対応するもの】邦貨 - 外貨、 邦人 - 外国人、 邦船 - 外国船
【言語関係】邦語 - 外国語/英語/仏語など、 邦字 - 外字/英字など、邦文 - 英文/仏文など、 邦訳 - 外国語訳/英訳など
どうも、「和菓子 - 洋菓子」「和服 - 洋服」など、「和 - 洋」の関係から生まれた言葉が圧倒的に多いようだ。明治の文明開化以後、伝統的な日本式のものを表現する際に「和~」という言葉を使い、西洋式のものを「洋~」と言うようになったのだろう。
そうでないのは、「和歌、和詩」「和語」で「和 - 漢」の流れとして、発生はずっと古く、「和学」「和書」「和風」は古くからあるが、「洋~」 にも対応した例である。
「和」 と 「邦」 の区別は微妙だ。しかし、どうも、「和~」 というと、あまりにも洋風化した日本人自身が。ある種の「非日常的な懐かしさ」を感じてしまうような感覚になっているものが多い気がする。「邦語」 はいわゆる日本語だが、「和語」は日本語から漢語系などを除いた、古くからの大和言葉をいう。
「邦画」「邦楽」「邦舞」は、「洋~」 に対応するところは 「和~」 と似た意味合いだが、少なくとも、この言葉ができた時代では、「懐かしい」というよりは、「日常的」な文化だったのではなかろうか。
また、似た意味の言葉としては、 「和~」と「邦~」では「邦~」の方がややヘビー、あるいはオフィシャルなニュアンスで使い分けられている。
「邦文」の方が「和文」より公式文書的ニュアンスが強く、 「邦船」は「日本船籍の船」だが、「和船」は「日本式の船」である。また、「邦訳」の方が「和訳」よりずっとヘビーで、かなりまとまった文学作品などの翻訳を意味する。
また、「邦貨」、「邦語」などは、「外国」という概念に対するものと言える。
「和」 と 「邦」 の系譜以外に、「日」 あるいは、もろに 「日本」 というのがあって、実はこれが案外多い。 「日本の」 あるいは 「日本式の」 という意味合いで、適当に広く使ってしまえるようだ。
「日」 日貨 - 外貨、 日系 - ○○系、 日舞 - 洋舞
「日本」日本画 - 西洋画、 日本髪 - 洋髪、日本語 - 外国語、 日本史 - 西洋史など、 日本酒 - 洋酒、 日本茶 - 紅茶・ウーロン茶など、日本庭園 - 西洋庭園など、 日本手拭 - タオル?、 日本刀 - 洋刀、 日本舞踊 - 外国舞踊、 日本間 - 洋間、 日本料理 - ○○料理 などなど。
ちなみに、「国 (こく)~」という流れがある。「国語」はほとんど学校の世界でしか使われないが、「国史」「国学」は、ちょっとナショナリズムっぽい感覚がある。
蛇足だが、「和式 - 洋式」というと、ほとんどトイレの話にしかならないというのがおもしろい。
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