人魚の数え方
小学館から「数え方の辞典」というのが出ている。紹介文によると、箪笥は「1棹(ひとさお)」、鱈子は「1腹(ひとはら)」、蚊帳は「1張(ひとは)り」、蔵は「1戸前(いっとまえ)」と数えるそうだ。
遺憾ながら、蔵を 「1戸前」 と数えるとは知らなかった。お蔵が建たないわけだ。
先週か先々週か忘れたが、朝のラジオで詩人の荒川洋治氏がこの本の紹介をしていて、ちょっと興味をもってしまったが、まだ買ってはいない。買ってもいいなと思うが、書店に行く度に忘れてしまっていた。欲しいと思うが、なかなか購入に至らない本や、観たいと思うが、なかなか観られない映画というのがあるが、そんな中の一つになりそうだ。
荒川洋治氏の紹介で印象に残ったのは、鬼や悪魔の数え方である。鬼や悪魔は「一匹、二匹」と数えるのだそうだ。しかし、さしもの鬼や悪魔も、改心して人間世界に受容されると、「一人、二人」 と数えるのだそうである。
一匹、二匹と数えられるような状態は「仮の姿」であり、本心に立ち返れば、人間と区別せずに扱ってもらえるのである。このあたり、日本文化の根本は「性善説」なのだと窺わせるに十分である。
しかし「人魚」には数え方の定説は存在しないのだそうだ。もともと日本文化の文脈にはなかった存在なので、数え方を決めるには、あまりにも漠然としているのかも知れない。
しかも、鬼や悪魔と違って、初めからそれほど邪悪な存在というわけではない。だったら「一人、二人」でいいではないかとなりそうだが、そうは行かない。脚が二本ついていないことには、なかなか人間扱いもしてもらえないのだ。難しいところである。
(このあたり、差別意識は微塵もございませんので、誤解のないように)
文化というのは、意表をつかれるとなかなか態度を決定できないもののようだ。
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