たばこ自販機について
財務省はこのほど、たばこの自動販売機を従業員の見える範囲に置かなければ、販売を許可しないと通達した。
これは、WHO の推進する「たばこ規制枠組み条約」を、日本も先月批准したことに対応する動きである。この条約は、年内にも国際的に発効することが確実だ。
たばこ自販機がこんなに多いのは、おそらく世界でも日本だけだろう。そもそも、外国に行ったら自販機というものが極端に少ない。それは、単純に治安の問題である。
屋外の人の目の届かないところに、商品と現金が確実に入っている自販機が設置されるということは、極端にいえば、「どうぞ持ってってください」と言っているようなものだ。日本でこれが堂々と設置されているというのは、治安がものすごくいいことの証明である。
最近では、銀行の ATM ごとブルドーザーで持って行ったりするのがいるらしいが、それでも、世界的にみたら日本の治安の良さはトップクラスである。
皮肉なことに、治安がいいために、未成年者がたばこを買いやすい環境が形成されているというわけだ。法律で未成年者の喫煙が禁じられているにもかかわらず、誰でも自由にたばこが買える自販機が、従業員の目の届かない屋外に設置されているということ自体がおかしいのである。
とはいえ、ことは金銭がらみで、しかも国の税収と街のたばこ屋のなりわいに関することだから、抵抗は大きい。異常な事態がここまで当たり前みたいになってしまったら、是正は難しい。
4年前に青森県西部の深浦町が、たばこ自動販売機の屋外設置を禁じる全国初の条例を施行した際には、販売店の自販機撤去が進まず、全国たばこ販売協同組合連合会も、「自販機は日本の伝統的な商文化」 とし、町と真っ向から争う構えを示した。
たばこ販売 自販機依存に包囲網
「自販機は日本の伝統的な商文化」という主張には、腰を抜かすほど驚いた。自販機そのものはかなり以前からあったらしいが、少なくとも一般に普及したのは、高度成長期以後の話である。それを「伝統的な商文化」と言ってしまったら、ここ 40年ぐらいで普及したことはすべて伝統文化になってしまう。
伝統文化もずいぶん安売りされるようになってしまったものだ。言ってる当人は厚顔無恥だからいいだろうが、聞いてる方が恥ずかしい。
とりあえず、政府の通達が行われたわけだが、いずれにしても早期に十分な徹底が行われるとは考えにくい。個人的には「通達はしたんですがねぇ」というアリバイ作りのようなものと見ている。
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