「御用達」 の読み方
「お前らのためのHTML講座のようなもの」という、サイトの日記に "私は最近まで「ごようたつ」 と読んでいた。間違いではないらしいが、ちと恥ずかしい" という記述があった。
おいおい、待てよ、「御用達」 は 「ごようたつ」 でいいんではないか。
そもそも「宮内庁御用達」は、明治 24年から昭和 29年までの制度だそうで、今では消滅している。往時の御用達業者が今でも看板にそう掲げているのを、宮内庁は黙認しているというだけということらしい。
しかも、これは「御皇室御用達」ではなく、「宮内庁御用達」なのであって、要するに、天皇陛下がお召しになっているというわけでは必ずしもなく、宮内庁の食堂などで食されていたものというのが、本当のところらしい。
さて、読み方に戻る。そもそも「御用達」の正式の読み方は「ごようたつ」である。それを「ごようたし」などと読むようになったのは、庶民の間の地口的言い習わしである。
「百人一首」を「ひゃくにんしゅ」 、「お師匠さん」を「おしょさん」などと言うのが、さも「粋」であるということで、通ぶって言うようになったようなものと、私はにらんでいる。
昔の上品な家庭では「便所に用足しに行くんじゃあるまいし、『ごようたし』なんて、言うもんじゃない」という風潮があったのである。また、「ごようだつ」と、濁っていうこともあった。
例えば、「屋形船」を、現在は「やかたぶね」と発音するが、歌舞伎の助六では、「鼻の穴に屋形船、蹴込むぞ」という台詞を、明瞭に「やかたぶねけこむぞ」とは言わない。「やがたぶねけこむぞ」(「が」 は鼻濁音)に近く聞こえる。江戸っ子の本来は、「やかたぶね」と「やがたぶね」の中間ぐらいがいいらしい。
「御用達」に戻るが、これもどうも、「ごようたつ」と「ごようだつ」の中間ぐらいがもっとも望ましいところであるらしい。「ひゃくにんしゅ」や「おしょさん」は趣があっていいが、「ごようたし」は、個人的にはあまり好きではない。
甚だしくは「ごようたち」なんて読む向きもあるが、これは明らかに間違いである。
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コメント
どうもこんにちは。
少し前に「的を得る」の欄にもお邪魔したのですが、
何の縁有ってか
「御用達」で調べ物をしていて、また辿りついてしまいました。
この言葉もやはり、今は「ごようたし」が
支配的な空気を醸し出しちゃってるみたいですねぇ。
google検索トップのサイトには、以下の様な文章が引用されていますが…
>「御用達」は「ごようたし」と読むべきで、「ごようたつ」は誤りと信じていましたが
…何ともはや、”べき”やら”信じて”やらと言われてしまうと、
もう、どう声をかけたものやら解りません。
統一された”正しさ”を求めてやまないこの姿勢、
もしかしたら、
政治(人種・宗教)の観点から言葉にイチャモンを付け辛い環境にある
日本版PC運動なのかもしれませんね。(ポリティカルの要素が有りませんけど)
依るものは何であれ、
何かを「正しいー!」と声高に叫ぶのって、きっと快感なんだろうと思います。
投稿: m2 | 2008年1月17日 21:37
m2 さん:
我が意を得たりのコメント、ありがとうございます。
このエントリーを書いたのは、「ごようたし」 が正しくて 「ごようたつ」 は間違いとする風潮が広まっているのが、ちょっと不愉快だったからで、「両方ありだよ」 ということを言いたかったんですね。
で、個人的には、「ごようたし」 はあんまり好きじゃないということです。
投稿: tak | 2008年1月17日 22:16