ツクツクホウシの修練
そろそろツクツクホウシが鳴きだした。夏も佳境である。
あれは 「ツクツクホウシ」 と鳴くものと思われているが、明治の頃には違っていたようだ。「おしいつくつく」 あるいは 「つくつくおしい」 と表記されている。どっちが正しいのかは、誰にもわからない。
『吾輩は猫である』の「猫」は、「これもついでだから博学なる人間に聞きたいがあれはおしいつくつくと鳴くのか、つくつくおしいと鳴くのか、その解釈次第によっては蝉の研究上少なからざる関係があると思う」と、疑問を投げかけている。
とはいえ、現代人の耳には、 「オウシツクツク」 と聞こえるだろうし、私の耳には「ツクツクホウシ」と聞こえる。
子どもの頃から感じていたのだが、ツクツクホウシは、ウグイスのようには、自らの鳴き方に習熟しないようなのだ。「ツクツクホウシ、ツクツクホウシ、ツクツクホウシ」と、何度か繰り返すと、根気が続かなくなり、ウヤムヤに帰してしまうのである。
我が家の次女が、「あんな時、ツクツクホウシも『しまった、カンでしまった!』って悔しがるのかなぁ」 と言っていた。例え悔しがって、鳴き方の修練を重ねたくとも、たった 1週間の命では、それも叶わないのだろう。
季節は深まり、過ぎゆく。
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