IT企業の成熟度
私はカタカナ言葉は嫌いではない。どちらかといえば、自分でもよく使う方だ。
「コンセプト」や「アイデンティティ」などは、「概念」「自己同一性」などと言い換えるより、カタカナのままの方がよくわかる。「蹴球」よりも「サッカー」の方がピンとくるのと同じことだ。
「サッカー」そのものを知らない人にとっては、「蹴球」と言い換えられたところで、「球を蹴る」という以上のことは、結局はわからない。それと同様に、「アイデンティティ」という近代的概念をわからない人には、「自己同一性」と言い換えたところで、結局はその意義は通じない。
しかし、カタカナ言葉をのべつ幕なしに使うのは「勘弁してよ」と言いたくなる。IT 関連企業の CM なんかに多い。そうした CM の訴求は「意味」ではなく「雰囲気」だけのものになりがちで、それは、IT 企業そのものの存在意義に反する。いや、あるいは現状の IT 企業の多くは、実は「雰囲気」しか売っていないのかも知れないが。
「アップデートなビジネスシーンのソリューションをサポートする」だの「オフィス・ネットワークのあらゆるニーズに応えるトータル・ファシリティ」だのと、ステロタイプの典型みたいなコピーを並べられても、効果としてはほとんど何も言っていないのと同じである。
上滑りになるだけで、結局は企業名しか残らない。いや、その企業名だってそれほど明確に記憶されるわけではない。それなら、球団買収に名乗りを上げてみる方が、ずっと効果がある。
こうしてみると、IT 業界というのはプロ野球を買い占めるほどの規模に成長したとはいえ、業界としての成熟度はまだまだだということがわかる。顧客が本質的に何を求めているのか、いかに訴求すれば効果的なのか、まださっぱりわかっていない。
自分のサイドの日進月歩に追いつくのがやっとで、それをどう編集して提供すればいいのか、明確に理解していない。どうしても自分勝手なマーケティングになりがちだ。
今後はマーケティングと広報宣伝の分野で「まともな」企業努力をしなければならないだろう。
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