特定効果音楽
英国のパブで、最も効果的な閉店放送用の曲は、クリフ・リチャードの「クリスマスの想い出(Mistletoe and Wine)」だそうだ。最も「客ハケ」がいいらしい。(参照)
エルビスの「ブルー・クリスマス」、 「きよしこの夜」なども上位にランクされ、英国の飲んべはクリスマスに弱いようだ。
クリスマス・シーズンでなくても、こうした曲は敬虔な気持ちをほんの少し呼び覚まして、「そろそろ家に帰るか」という気にさせるのかも知れない。なんとなく「パブロフの犬」を連想させる。
日本の閉店放送で流れる音楽といえば、何といっても「蛍の光」にとどめを刺すだろう。日が暮れてから急な買い物に飛び込んだ店で「蛍の光」が流れているだけで、かなりあせってしまう。これも「パブロフの犬」 だ。
下校音楽で多いのは、 「夕焼け小焼け」とドボルザークの「新世界より」だそうだ。しかし、私にとってはなんといっても、スコットランド民謡の「アニーローリー」である。中学校時代、放送部に入っていたことがあって、下校時間になると、ほとんどすり切れかけたレコードで、毎日この曲を流していた。
それから、もう一つ特別な思いのあるのが、グレン・ミラー楽団の「ムーンライト・セレナーデ」である。私が少年時代を過ごした酒田という街には、当時「グリーンハウス」という洒落た洋画専門の映画館があって、上映が始まるとき、スクリーンのカーテンが開くのに合わせて「ムーンライト・セレナーデ」が流れたのである。
酒田で生まれた私たちの世代にとって、この曲は「グリーンハウス」で胸をときめかす時の音楽に他ならなかったのである。
この映画館には、「シネサロン」という 14人定員の小規模な映写室があって、大量動員は期待できないが、映画好きには堪えられないというレアな作品を常時上映してくれていた。この「シネサロン」のおかげで、我々は多くの名画を見ることができたのである。
この「グリーンハウス」は、昭和 51年の酒田大火で焼失して今はない。焼失というより、何と火元がこの映画館だったのだ。だから、あの大火は一つの時代の終わりという気がしている。
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