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2004年12月18日

究極のウソ発見器

米国テンプル大学のチームが、「究極のウソ発見器」を開発した。従来のポリグラフと異なり、発汗や脈拍などの訓練で制御可能なデータを用いるのではないという。
機能的磁気共鳴断層撮影(fMRI)とかいうものを使って、脳の働きそのものをモニターして判断するのだそうだ。

テンプル大学医学部脳機能画像センターのスコット・ファロ博士のチームの研究によると、人間がウソをつく時と本当のことを言っている時とでは、脳の活動が違うのだそうだ。(そりゃそうだろうと、ツッコミたくなるのを、ぐっとこらえて、以下を続ける)

fMRI を使って調べると、ウソをつくと、前頭葉のほか、海馬や MT野など、計 7カ所の脳の部位が活性化する。しかし、本当のことを言うと、前頭葉や側頭葉など 4カ所しか活性化しなかったという。これで、本当とウソを区別できるというのである。

以前から、脳波を調べて記憶に関する P300と呼ばれる反応を見るという手法は知られていた。これは脳の海馬から 0.3秒後に出る脳波の事で、強く刻まれた記憶が刺激されると、この脳波が出る。

つまり、実際の記憶に直結する P300脳波が出ているのに、それとは違うこと言うと、「ウソ」ということになる。今回のメソッドがこれを発展させたものかどうかは、よくわからないが。

今回のニュースは、素人考えでは、要するに「ウソをつくときの方がずっと頭を使う」ということのように読み取れる。何しろ、本当のことを言うと、脳の 4カ所しか活性化しないのに、ウソをつくと、7カ所も活性化するというのだから。

確かにそうかもしれない。それに、頭を使ったウソはばれにくい。よくできたウソというのは、騙される快感というものまで喚起することがある。

いやいや、そんなことを言いたかったのではない。

私は、「本当」と「ウソ」の本質的な差異というのが、どこにあるのか、はっきり言ってわからないのだ。「事実そのまま」が「本当」で、ちょっとでもねじ曲げれば「ウソ」ということになるのだろうか。しかし、「事実そのまま」なんてことが、人間にストレートに認識されるというのは、ほとんど不可能である。

ある一つの出来事があったとしても、そこに立ち会った人間が 100人いれば、100通りの認識があるはずなのだ。そうなると、「事実」とは何かという、とても哲学的な領域の議論にまで発展してしまう。

脳医学的見地からすれば、「それについて言及する際に、人間の脳の 4カ所しか活性化しないのが『事実』であり、7カ所が活性化してしまったら『虚偽』である」 と定義することだってできるだろう。しかし、それは本末転倒のそしりを受けかねない。

ある一つの出来事について、複数の異なる認識が言及され、しかも、そのすべてのケースで 脳の 4カ所しか活性化されなかったとしたら、一つの出来事に複数の「事実」が生じてしまうということになるからだ。

しかし、あるいはそれはそれでいいのかも知れない。プラトンの「イデア論」が想起される。本当の「真実」とは、不可視の「イデア」であり、我々が認識できるのは、そこから発生したものにすぎないというコンセプトは、新たな科学の領域で復活するかもしれない。

tak-shonai の本宅サイト 「知のヴァーリトゥード」 へもどうぞ

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