日本の改革が進まないわけ
日本って、何をするにしても動きがトロすぎる。アジアの国の中でも、韓国や、マレーシア、シンガポールなどと比べると、日本の諸改革は全然進まない。
これは、日本の人口が多すぎるためだという議論がある。確かに先進国といわれる中では、アメリカの 2億 8000万人に次ぐ。
日本の人口は約 1億 3000万人なので、アメリカはその倍以上である。しかし、アメリカが日本の 2倍トロいかというと、そうではない。アメリカは連邦制で州単位の地方分権が進んでいるからである。それに大統領が代わるごとに政府のスタッフがほとんど総入れ替えになるので、変化に慣れている。
ちなみに、世界の国別人口ベストテンは、以下の通り。 (2000年時点の資料、単位=百万人)
1 | 中国 |
127,513.3
|
2 | インド |
100,214.2
|
3 | アメリカ合衆国 |
28,323.0
|
4 | インドネシア |
21,048.6
|
5 | ブラジル |
16,772.4
|
6 | ロシア連邦 |
14,549.1
|
7 | パキスタン |
13,750.0
|
8 | バングラデシュ |
13,743.9
|
9 | 日本 |
12,686.7
|
10 | ナイジェリア |
11,522.4
|
人口世界一の中国は共産主義国家だし、残る 9カ国中で連邦制をとっていないのは、インドネシアと日本の 2国だけである。人口が世界 11位、12位のメキシコ、ドイツも連邦国家である。
日本は、自由主義を標榜する先進国で、人口が 1億人をはるかに越えていながら、地方分権が進んでいないという点では、世界でたった一つのケースである。「珍しい」どころのレベルではない。ほかに例がないのだから。
考えてみれば、日本がこれほどまでに強い中央集権的体制をとっているのは、明治以降のたかだか百数十年に過ぎず、その前は地方分権そのものだったのである。江戸時代までは、出羽、武蔵など、日本の中に「国」がいっぱいあったのだから。
日本人は、誰かが先に始めないと、自分からはなかなか新しいことを始めないという特性がある。よく 「となりが種まきを始めたら自分も始める」 ということから、「隣百姓」などと言ったりする。しかし、江戸時代までは、先に行動を起こしてくれる「隣の国」が日本の中にたくさんあったのだ。それだから、明治維新もできたのである。
明治以後、日本の中には「隣国」がなくなってしまったが、「欧米に追いつき追いこせ」という強力な目標があったので、まだやってこれた。しかし、戦後はそうした先進的モデルが、国の内にも外にもなくなってしまい、誰も皆、既得権益を守ることに汲々としているようにみえる。
これでは、変化は促進されない。誰かの利益はほかの誰かの不利益なのだから、中身のない議論ばかりが延々と繰り返されて、何も変わらない。そりゃそうだ。東京と東北を一緒くたにして考えようとするのが、そもそも無理なのである。
シンガポールやマレーシアは、先進的改革を次々と進めているが、それはこの 2国の人口が、それぞれ、400万人、2300万人と、小回りを利かせた改革をするのにちょうどいいぐらいの規模だからやりやすいのだとも言える。
日本の国土は狭いと言われるが、それは幻想で、そんなに捨てたものではない。端から端まで行くのに、飛行機を乗り換えなければならない国なんて、そう多くないのだ。さらに人口で考えたら、ひとまとめになんかとてもできないのである。
どう考えても地方分権は進めるべきだ。しかし、それをしてしまうと既得権を失うのが、他ならぬ中央官庁なのだから、なかなか進まないのも道理である。やっかいな話である。
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