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2004年12月22日

「早生まれ」 の込み入った事情

「早生まれ」というのは何月何日生まれまでか、正確にご存じだろうか。3月 31日生まれまでと思っている人が多いが、正解は 4月 1日生まれまでである。
法律でそのように決まっているのだが、その筋立てが一筋縄ではいかず、かなり煩雑でややこしい。

以前の同僚に 4月 1日生まれの女性がいて、彼女の両親が「早生まれは 3月 31日まで」と、ありがちな誤解をしていたため、満 5歳の誕生日を迎えた年に幼稚園(年少組)に入ってしまった。ところが、それだと小学校入学から逆算すると 1年遅いことが発覚し、入園式の 2日後に 「飛び級」で年長組に編入させられたという。

幼稚園の飛び級とは、希有な体験である。親は入学の物いりが想定より早まってしまって、驚いたに違いない。

我が国における年齢を含む「期間」というのは民法によって定められており、その第 143条によると、「其起算日ニ応当スル日ノ前日ヲ以テ満了」とある。言い回しがややこしいのだが、人間の年齢に関して噛みくだいて言えば、誕生日の前日でそれまでの年齢を「満了」する。要するに誕生日の前日に歳をとってしまうということだ。(前日の何時かは定められていないから、前日になったとたんに歳をとるのだろう)

普通、人間は誕生日がくると年をとると考えられているが、民法上は、おっとどっこい、既に前日に年を取ってしまっているのである。これは、かなり意表を突く規定ではある。ということは、4月 1日生まれの子どもが満 6歳とみなされるのも、「いわゆる 6歳の誕生日」 の前日、3月 31日なのである。

私なんか 30歳になった時、往生際の悪いことに、誕生日当日の午後 5時半を過ぎてまで「俺は夕方 6時に生まれたから、まだ 20代だ」と言い張っていたのだが、それは知らなかったとはいえ、見当外れの屁の突っ張りだったのである。

ここまで確認したら、次のステップである。学校教育法第 22条によれば 「保護者 (子女に対して親権を行う者、親権を行う者のないときは、未成年後見人をいう。以下同じ) は、子女の満 6才に達した日の翌日以降における最初の学年の初めから、(中略) 就学させる義務を負う」 とある。

ということは、4月 1日生まれの子どもは 3月 31日に満 6歳になり、その翌日 (ここが大事なところだ)、つまり 4月 1日に始まる小学校の新学年に間に合うというわけだ。「最初の学年の初め」(=学校の新学年)というのは、入学式が何日であれ、法律上は 4月 1日と決まっているのである。

ここで、「ちょっと待てよ」と言いたくなるのは、私だけではあるまい。というのは、4月 2日生まれの子どもだって、民法に従えば 「最初の学年の初め」 である 4月 1日には満 6歳になっているわけなのだから、 「早生まれ」 扱いにしてもよさそうなものなのである。しかし、前述の通り 「満 6才に達した日の翌日以降における最初の学年の初め」という規定を作って、4月 2日生まれを「早生まれ」の枠から巧妙に閉め出しているのだ。

実にまったく煩雑なお話である。普通に考えれば、「4月 1日が誕生日の子は、新学年開始の日に満 6歳になるので、ギリギリセーフで、小学校に入学できる」と考える方が、結果オーライで、ずっとシンプルに済ませられる気がする。しかし民法というのは、他の様々の期間計算 (例えば飲み屋のつけの時効とか)とのからみで整合性をとるために、誕生日の前日に年をとると規定せざるを得ないようなのだ。

そしてさらに、4月 1日は学校における元旦のようなものなので、この日に生まれた子どもは「ご祝儀的に」早く入学させてしまおうという発想が、根底にはあるようなのだ。

「満 6才に達した日の翌日以降における最初の学年の初め」という、苦しい辻褄合わせみたいな文言は、4月 1日生まれを特別扱いして 3月 31日までに生まれた子と同学年にさせ、さらに、4月 2日生まれと一緒にしないという 2つの目的を同時に果たしているわけだ。このおかげで、幼稚園の飛び級なんて措置を講じさせた、ありがちな誤解も生じるわけだが。

法律というのは、ただでさえややこしいのに、その上、妙なところで情に棹さしているようなところがあって、そのためにますますややこしくなっている。そのあたりは、必要以上に突き詰めて考えてはいけないもののようなのである。

【2020年 7月 28日 追記】

この件に関しては、人は誕生日の前日になった途端に年を取るのではなく、誕生日の前日が終わらんとする一瞬(24時)に年を取るとされているようなのだ。詳しくは、2020年 7月 28日付の "人は誕生日の前日に年を取るわけなのだが" を参照されたい。

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コメント

へぇ~、です。
法律って、こんなにもややこしいなんて、知りませんでした。
文章が幾重にも折り重なってくると、脳の中でシナプスがブチきれます。
そう、20文字以上の文章に耐えられません。こんな私には、とてもついていけない世界です。
ちなみに、私の家内は、同じ年で4月1日生まれ。
だから、一学年、年上女房なのさ。

投稿: くっさん | 2005年7月26日 15:16

友達としっかり読みました。一生懸命1つずつ理解しながら・・・
で、少し疑問に思ったことがあります。
小学校の入学は満7歳では???
もし満6歳での入学なら、私たちまだ理解できていないようです・・・
今日は気になって眠れないかも Ω\ζ゜)チーン

投稿: ひかる | 2005年12月13日 18:19

くっさん:

コメントに気付かず、レスがメチャクチャ遅れてしまいました。ゴメンなさい。

法律って、複数の条文の合わせ技で適用される場合が多いので、本当にやっかいです。
でも、それぞれの規定を単独の条文で規定してしまうと、多くの条文で矛盾が生じてしまう場合が出てしまうでしょうから、「合わせ技方式」 の方がいいんでしょうね。
Wondows の DLL ファイルみたいな感じです。

投稿: tak | 2005年12月13日 22:01

ひかるさん:

>小学校の入学は満7歳では???

もう一度、よーくお読み下さい。

投稿: tak | 2005年12月13日 22:02

今日の記事のリンクとはいえ、15年もさかのぼってすみません(笑)

これ、ちょっと違います。
正確には「生まれた日の前日の24時をもって」年齢が増えるんです。なので誕生日の前日はまだ若い年齢を主張してOKで、当日は何時に出産されたかに関係なく既に歳を取ったものとして扱います。

「それなら生まれた日の当日の0時」でもよさそうですが、ここで問題となるのが、うるう年の2月29日生まれの人です。
「当日(同じ日付)」ではダメなんですなあ。2月29日0時は4年に1度しかないので。しかし「28日の24時」は毎年あるので大丈夫です。
では3月1日生まれの人は?「前日の24時」なので、閏年なら2月29日24時に、そうでない年は2月28日24時に、歳を取るのです。
(上記、既にご存じでしたらすみません)

まあつじつまが合っているような、煙に巻かれたような、モヤっとする話です。なんか「注記」でもして、4月1日生まれの子は4月2日以降の子と同じ学年にする、とかしちゃってよかったんじゃないかと思いますね。

投稿: らむね | 2020年7月26日 18:23

らむね さん:

ご指摘ありがとうございます。

これまで、この問題に関して時刻を示す文言がないことから、「前日になってすぐに」と解釈していました。

しかし、民法 141条(期間の満了)に、「期間は、その末日の終了をもって満了する」とあり、条文自体には明確に示されていませんが、これは
「末日の終了(午後(深夜)12時の経過)」の時点と解釈されているようですね。

なるほど、思い違いをしていました。

この件に関しては、機会を見て改めて触れたいと思います。

投稿: tak | 2020年7月26日 20:26

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