奈良の事件で思うこと
奈良の事件の影響もあり、性犯罪の前歴者の居住地などの情報を、警察が把握できるように法整備に入ったという。
しかし、実際にはその程度のことで抑止効果があるかどうかは疑問である。今回の事件のディテールが報道されるにつけ、なかなか難しい問題であることがわかる。
今回の事件では、容疑者は大阪府の毎日新聞販売所の購読代金を持ち逃げしたという業務上横領容疑で、逮捕状まで出ていたことがわかった。
ところが一方で、横領事件の被害者である大阪の販売所は、昨年 9月の時点で容疑者の居所をつかみ、被害金額を分割で返済させていた。そのため、彼が逮捕されたら返済が滞ると思い、警察には「居所は知らない」とシラを切っていたらしい。
昨日朝のニュースで、大阪府警は「小林容疑者の逮捕状を取っていたが、居所がわからなかったため、逮捕できなかった」と言っていると聞いた。ナンセンスな言い訳と思ったが、その裏には、こんな込み入った事情があったわけだ。
当の被害者の販売店がこんな具合で、被害届を出しながら「金さえ返ってくればいい」とばかりに、捜査に協力しなかったのだから、いくら警察でも犯人逮捕は難しい。そして、23万円程度の持ち逃げ事件で、ちょっとした人間の損得勘定から、少女の命が奪われる事件につながってしまった。
さらに言えば、大阪と奈良の毎日新聞販売店は、同じ系列でありながら情報が遮断されており、奈良県の販売所ではそんな問題人物とは知らずに、容疑者を雇ってしまっている。
世の中の「アヤ」とは、悲しいことだが、往々にしてこんなものである。それを考えると、警察が法務省から性犯罪前歴者の届け出た住所を入手するというだけでは、犯罪抑止という点ではまったく不十分だろう。
例えば、前歴者が届け出を行わずに移動してしまったとたんに、実質的には「居住地不明」でウヤムヤになってしまう。関係者がちょっとシラを切っただけで、犯罪者の居所がつかめなくなるような世の中だから、実際の効果は推して知るべしである。
本当に抑止効果を求めようとしたら、今回の措置だけでは済まないだろう。しかしだからといって、あまり行き過ぎた管理国家になるのも考え物だ。
「より突っ込んだ議論が待たれる」なんて、そのへんの新聞の社説の紋切り型みたいで、自分でも嫌になるが、今回の問題に関しては、そういうしかない。こういうのは、本当に難しい問題だ。
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