« ホリエモンという人 | トップページ | 宗教行為をめぐる冒険 »

2005年2月17日

地震の縦揺れと横揺れの謎

昨日夜明け前の地震には、さすがに驚いてしまった。すぐにラジオを付けたところ、「最大震度 4 の地震」 なんて言っていたが、「そんなもんじゃないだろう」 と思った。
もう一眠りして、テレビを付けると、朝のニュースではいつの間にか「震度 5弱」に格上げになっていた。ちっとも嬉しくないが。

寝ぼけた頭で「ニュースで控えめな震度を報道してくれる方が、実家の親に余計な心配をかけずに済むから、ありがたいかもしれん」などと思っていたのだが、なまじ「正確な報道」をしてくれたおかげで、朝の 9時過ぎに、私と妻の実家から相次いで地震見舞いの電話が入った。それはそれで、またありがたいことであるが。

大きな地震があると、テレビ・ニュースは、地元住民の生の声を伝えるのがお好きなようである。今回も某局で、つくば市のコンビニの店員に電話取材した声が流された。

取材に応じたコンビニ店員は、「始めグラグラっと来て、すぐに縦揺れになった」みたいなことを言っていたが、私がいつも疑問に思うのは、この「縦揺れ」という言葉である。大きな地震があると、なぜか多くの人が「縦揺れが凄かった」と言うような気がするのだ。

学校で習った常識では、地震が起きると、まず伝わり方の速い「P波」が先に地表に到達し、その後に「S波」が到達するということになっている。そして「P波」というのは「縦揺れ」で「S波」は「横揺れ」なのだそうだ。

「縦揺れ」というのは、具体的に言うと、地震の伝わる方向と同じ方向の震動なのだそうである。とすると、地震というのは地中深くで発生して地表に伝わるから、震源地が近いほど、縦、すなわち垂直方向に近い揺れになるのだろう。

一方、 「S波」というのは進行方向と垂直方向の揺れだそうだから、地表では横方向の揺れに感じられるようである。

だとすると、「始めグラグラっと来て、すぐに縦揺れになった」という証言は、「本当かなぁ」という気がしてしまう。気のせいじゃないか?

私自身の感覚では、今回の地震は、最初「ずーん」と下から突き上げるような衝撃があって、あとは「ゆっさゆっさ」と横方向の揺れになったように思う。

縦方向の感覚というのは、前述のように、「揺れ」というよりは、むしろ「突き上げるような衝撃」だった。もちろん、直下型なので、最高の揺れを感じている間も、単純な横揺れだけではなく、縦方向の震動も衰えることなくミックスされていたはずだ。しかし、ものが倒れたり棚から商品が落ちたりというのは、ほとんど横方向の揺れのためである。

「激しい縦揺れで、立っていられなかった」という証言を聞くことがあるが、それは多分、感覚の混乱か、何かの思い違いだろうと思うのだ。そんなに激しい縦揺れがあるほどの地震なら、横揺れの加速度はその何倍もすごいはずだ。

「あれって、自分の体の向きの、左右に揺れたら 『横揺れ』、前後に揺れたら 『縦揺れ』 って言ってるだけじゃないか」なんて言う人もいる。確かに、体の前にあるものにつかまったら、「縦方向の揺れ」 と錯覚することもあるかもしれないが、ちょっとなぁ。

tak-shonai の本宅サイト 「知のヴァーリトゥード」 へもどうぞ

|

« ホリエモンという人 | トップページ | 宗教行為をめぐる冒険 »

ニュース」カテゴリの記事

コメント

地震波はP波とS波だけでなく、表面波というものもあり、その中のラブ波は縦(+横)に揺れるというものがあります。表面波は名前のとおり表面近くでしか伝わらないので直下型の地震で多いそうです。震源地が深ければ深いほど縦揺れが発生する確率(もしくはその振幅)が低いです。「強い縦揺れで立てなかった」は錯覚ではなく直下型の大地震に起きるものです。プレート境界型の地震では少ないです。

投稿: ファーブル | 2011年4月10日 11:32

失礼しました、縦に揺れる波はレイリー波でした。ラブ波はS波と同様に剪断波です。

投稿: ファーブル | 2011年4月10日 12:09

ファーブル さん:

ご教示、ありがとうございます。

表面波 (レイリー波、ラブ波) というものの存在を初めて知りました。認識を新たにしました。

ただ、この地震の時、同じ地域にいた私の感覚としては、確かに最初に 「ズーン」 とくる突き上げ (縦揺れ) があり、その後に 「ゆっさ ゆっさ」 と横揺れがありました。その後に縦揺れというのは意識されませんでした。

それで、放送で流れたコメントに疑問を抱いたわけです。

さらに、3年半後に書いた 「地震の縦揺れと横揺れの謎 2」 では、

実際、ユッサユッサとかなり大きく横に振れる地震が収まったばかりの時に、「いやあ、『縦揺れ』 がすごかったねぇ」 なんて言い出す人もいて、「この人、決して嘘つきじゃないんだろうけど、今後は言ってることをあまり真に受けないようにしよう」 なんて思ったりする。

と書いています。「感覚と言葉のリンク」 がかなりいい加減な人がいるようなのです。

https://tak-shonai.cocolog-nifty.com/crack/2008/07/post_ab12.html

投稿: tak | 2011年4月11日 16:14

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 地震の縦揺れと横揺れの謎:

« ホリエモンという人 | トップページ | 宗教行為をめぐる冒険 »