「おでん」の語源
ちょっと前から書こうと思っていて忘れていたのが、「おでんの語源」 である。
先月あたり、お昼の 「笑っていいとも」 で、「"おでん" はどうして "おでん" と言うか」という問題に、タモリが簡単に 「田楽だろ」 と答えて、それっきりになっていたが、これだけでは、正解の半分にしかならない。
それでは、なぜ「おでん」が「田楽」 なのかが、問題とされなければならないのである。
「おでん」のもともとの形は、豆腐に串をさし、味噌をつけて焼いた「田楽豆腐」が始まりであったらしい。何ゆえにそんなものを「田楽」と呼んだのか。それはその形が「田楽法師」に似ていたからである。
日本には 「能」 という伝統芸能があり、今でこそ、あの観世流などの格式高いのが「お能」ということになっているが、元々は、その系譜は「猿楽能」と「田楽能」に分かれていた。
「猿楽能」は「物まね」つまり写実的な演劇を志向したもので、今の「能」の源流になった。一方、「田楽能」は野外でのページェント(種々雑多な出し物)が主体だった。そのページェントの中でも人気の呼び物が「一本高足」である。
一本高足とは、左図の如く、十字に組んだ棒に乗って、ぴょんぴょん跳びはねるものである。昔はこんなものでも十分面白かったのだろう。今でも各地田楽行事では人気の出し物として残っている場合が多い。
この図をよく見てもらいたい。田楽豆腐は、三角帽子をかぶり、一本高足に乗って跳びはねる田楽法師にそっくりだったのである。多分、その頃から、上の方に差すのは、豆腐を斜めに切って三角にしたものだったのだろう。
こんにゃくに味噌を付けたものが出てきたのはその後のことのようで、当世のコンビニで売っているような「煮込みおでん」が登場したのは、さらにずっと時代が下って江戸時代後期の江戸のことらしい。
その証拠に、上方では当世風のおでんのことは「関東煮(かんとうだき)」と称して、伝統的なおでんとは区別するようだ。
ちなみに右図のように、真ん中にゆで卵かなんかをさしたら、ますます田楽法師みたいになる。
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