名曲喫茶「クラシック」の閉店
東京中野の名曲喫茶「クラシック」が、今年 1月末、「閉店しました」という 1枚の貼り紙を出したきり、75年の歴史に幕を閉じたという。(参照)
ここ 20年以上も行っていないが、とても残念な気がする。何しろ、私の妻がこの店でバイトをしていたのだ。
もう 30年ほど前の話である。私たちはこの店によく出入りしていた。早々と大学を中退し、絵の勉強をしようとしていた彼女は、クラシックの雰囲気が格段に好きだったようで、ある日、マスターの故・美作七朗氏に掛け合った。
「私を使ってくれませんか?」
「あぁ、あんた、良さそうだから、明日からおいで」
たったこれだけの会話で、彼女は翌日から、かの伝説の名曲喫茶の店員になってしまったのだった。
妻は美作氏に結構気に入ってもらっていたようである。ある日、当時私が住んでいた国分寺の駅近くを一緒に歩いていたら、美作氏に出会った。彼はあちこちの友達を訪ねて、ほっつき歩くのがお好きだった。
その日は、彼の友達の経営する飲み屋に連れて行ってもらい、一緒に酒を飲んだ。いつもクラシックの店の奥にゆったりと座っておられる風情を崩さず、淡々とした飲みっぷりだったが、ビールの銘柄だけは「キリンのラガー」に情熱的に固執しておられた。
そのマスターも平成元年になくなられたと風の便りに聞いたが、店はまだ続いているという話だった。
ついにその「伝説」にも終止符が打たれたわけだが、その途中にささやかながら関わりをもってしまった我々は、このニュースを読んで、とてもしんみりとしている。
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