毛皮とレザーと人間の業
動物愛護団体の PETA (People for the Ethical Treatment of Animals) が、J. Lo ことジェニファー・ロペスの毛皮好きをやり玉にあげるサイトを立ち上げた。その名も、"JLoDown.com"。
高級毛皮に身を包んだ J.Lo の写真と、むごたらしく毛皮を剥がれる動物の写真を並べて掲載している。
アライグマとおぼしき動物を地面に叩きつけて気絶させ、まだ息のあるうちに皮を剥いでいくという生々しいビデオまでみせて、毛皮を着ることがいかに動物の虐待で成立する行為であるかをアピールしている。
毛皮に関しては、私も好きではないので、自分で着ようという気になれないが、他人にまでそれを着るなと強要する気もない。しかし、満員電車に揺られて通勤するような身分で、毛足の長い高級毛皮を着るのは遠慮した方がいいと思う。
いや、別に「貧乏人は毛皮を着るな」と言うわけではない。単に、高級毛皮を着て満員電車に乗り込まれると、襟足の毛が隣に立つ乗客のほほをなでて、くすぐったくてたまらないと言いたいのである。毛皮を着るような人は、ぜひ、運転手付きの車を使っていただきたいものだ。
欧米でも毛皮に反対する人はかなり多く、一時は、高級毛皮にスプレーでペンキを吹き付けるのが流行ったことがある。そんなことをしたら、使い物にならなくなった毛皮の代替品が買われるので、毛皮の需要がますます増えることになると思うのだが。
一方、レザーに関しては、毛皮ほどの反対運動は起きていない。レザー製品で有名なスペインの業界団体首脳に聞いたところ、「毛皮はわざわざ野生動物を殺すのでよくないかもしれないが、レザーは食肉用に飼育された動物のものなので、動物虐待というわけではない」と釈明していた。
食いもしない動物をわざわざ殺すのは虐待だが、肉として食うために人間が育てて殺した動物の副産物としての皮を使うのは、虐待ではないという論理である。
もっと端的に言えば、食うために育てた動物なら、殺しても虐待ではないということだ。昔から肉食を常としてきた民族は、このくらい割り切らなければ、アイデンティティがおかしくなってしまうのかもしれない。
ところがこの論理では、クジラは食うために育てたわけではないので、殺して食うのは残酷だということになる。だったら、クジラを養殖してしまえば(もし可能ならば)いいのか。
このあたりは、どう屁理屈をこねたところで、他の生物の命を奪うということに変わりはない。人間の業である。牛を食いながらクジラを食うなというのは、業に無自覚な者の戯言である。
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