サブミッションの復権を
最近当サイトを見始めた人は、私が格闘技フリークであることを知らないと思う。
というわけで、本当に久しぶりで格闘技のテーマで書こうと思う。このサイトがどうして「知のヴァーリトゥード」なんていうタイトルなのか、改めてきちんと認識してもらわなければならないこともあるし。
23日の PRIDE ミドル級 GP 開幕戦はとてもレベルの高い試合が多く、テレビ観戦していても、かなり力が入ってしまった。
これだけ納得させられる試合が連続すれば、PRIDE は大丈夫だろう。あるいは、ミドル級の下に、70kg あたりを中心としたライト級を作れば、日本人選手がものすごく活躍できるだろうに。
ただ、最近の総合格闘技を見ていて感じることは、関節技の不振である。今回の PRIDE でも、中村和裕がケビン・ランデルマンに決めたアームロックなどは、つい 2~3年前までなら確実にタップを奪えていた技だ。それがフィニッシュホールドにならず、すり抜けられてしまう。
近頃では、総合格闘技で決まり手になるサブミッションといえば、逆十字か、首/頸動脈を決める系統の技だけになってしまった。関節を曲がる方向に極限まで曲げる系統の技 (アームロック系) は、アウト・オブ・トレンドである。
それは、以前の桜庭対ホイス・グレイシー戦のように、最後まで我慢してタップしなければ負けたと認めないとかいう不明朗なことが生じて、何となく嫌われたということもあるが、ギリギリまで我慢してクリアする対処法が進んだからでもある。
それは、「曲がる方に曲げる」という関節技が、「何とか我慢できる」ものという認識が進んで、気持ちが萎えて諦めるということがなくなったからだ。その点、逆十字と首/頸動脈関係は、まだ生理的恐怖感が瞬時に襲うため (実際に関節が破壊される痛みに襲われることもあり)、すぐにタップを取ることができる。
このままでは、総合格闘技におけるサブミッションのバリエーションが狭くなってしまうことが心配だ。私はノゲイラのような「関節技の職人」的ファイターの試合が好みなのである。
ところが、昨年大晦日のノゲイラ対ヒョードルの試合でも、ヒョードルはせっかく上になってもノゲイラのガードポジションからの関節技に一切付き合わず、下から腕を取られそうになると、すぐにふりほどいて自らスタンディング・ポジションに移行していた。
こうした状況が続いたら、総合格闘技で勝つための条件は以下のようになる。
- 撃ち合いにめげない。
- タックルを切る技術が高い。
- バランスがよくて、容易に尻餅をつかない。
- 寝技での打撃技術が高い。
- 腕を極められそうになったら、さっさと立ち上がる。
これでは、あんまり面白くないなあ。
今後、組み技系のファイターが総合格闘技で勝つためには、ガードポジションからの関節技をすかされずに極める技術を開発しなければならない。
上からのパウンドを封じるためには、膠着にもっていくよりも、リスクは高いが、相手のパウンドの動きを逆利用して下から揺さぶり、バランスを崩しながら、マウントポジションを維持すること自体を困難にしなければならない。少なくともその方向で技術開発を行わない限り、組み技系の不利は続く。
そして、相手が向きを変えようとする隙に、脚部を効果的にフックして逃げられなくした上で、流れの中で手首か足首を極める。
肘とか膝では、ここまで技術が進歩してしまうとなかなか極められないが、手首/足首なら極まる可能性が高い。足首は慎重にじわじわ極めることも可能だろうが、手首は一瞬にして極めなければすぐにふりほどかれるか、逆にパウンドを浴びせられる。難しいところである。
総合格闘技は、以前はマウントをとってぼこぼこにパウンドを浴びせ、相手が嫌がって亀の子になったら後ろから頸動脈を極めるという単純な勝利の方程式があった。しかし、近頃では、それ以前の立ち技の強さが勝負を決めるようになってしまっている。
この流れを、もう一度サブミッションに変えていくためには、より高い技術開発が必要だ。あるいは、立ったままでのサブミッションを磨くとか。
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コメント
なるほど奥深いところを付いていらっしゃいますね。
私も同感です。
さらに面白くなる為にはどうなっていけばいいんでしょうかね?
投稿: club-ener | 2005年4月24日 21:17
サブミッションのスパーリングに、打撃で応酬する形式を取り入れる必要があると思います。
これに慣れとおかないと、技に入るときにタイミングを合わせてパンチや蹴りが飛んできて、桜庭対ミルコの時のような悲惨なことになります。
もっとも、型を完成させる前にこれをやると、きちんとした入り方ができなくなるかもしれませんが。
投稿: tak | 2005年4月24日 21:42