五月晴れの本当の意味
以前、5月のさわやかな青空は、「五月晴れ」ではないと書いた。(参照)
本来、「五月晴れ」という言葉は、旧暦五月、つまり、新暦の 6月から 7月にかけての、梅雨時の晴れ間のことを指すのである。「五月雨(さみだれ)」が「梅雨時の雨」を指すのと同じことだ。
ところが、Goo 辞書 (三省堂提供 『大辞林 第二版』) では、以下のように説明されている。
(1) 新暦五月頃のよく晴れた天気。
(2) 陰暦五月の、梅雨 (つゆ) の晴れ間。梅雨晴れ。[季]夏。《男より女いそがし―/也有》
なんと、驚くべきことに、間違った解釈によってはからずも定着してしまった語義の方が先に書かれているのである。だから、三省堂の辞書は嫌いなんだ。少なくとも、大修館書店の『明鏡国語辞典』では、順序が逆だぞ。
この誤用は、どうやら気象庁が率先して定着させてしまったようなのだ。気象庁のサイトには 「季節現象」 というページがあって、「さみだれ」と「さつき晴れ」は以下のように解説されている。
さみだれ 梅雨期の雨 (旧暦五月の雨、「五月雨」 と書く)。
備考 通俗的な用語のため予報、解説には用いない。
さつき晴れ 5月の晴天
備考 本来は旧暦の5月(さつき)からきたことばで、
梅雨の合間の晴れのことを指していた。
何と、「さつき晴れ」の解説の 「備考」 として、本来の語義を「梅雨の合間の晴れのことを指していた」と過去形にしてしまっている。
さらに、「さみだれ」の語義を正しく解説しながら、「通俗的な用語のため予報、解説には用いない」なんてことにしてしまっている。
ふぅむ、日本語をおかしくしてしまっているのは、気象庁だったのか。悲しいなあ。
「男より女いそがし五月晴れ」という也有の句がわからなくなるのも道理である。
梅雨の合間の晴れ、つまりつかの間の天気だから、たまった洗濯物をしてしまおうと、女が忙しくなるということなのだが、「新暦五月頃のよく晴れた天気」としてしまっては、誰もピンとこなくなってしまう。
そのうち、「五月雨」も「5月のさわやかな雨」なんてことになりかねない。
| 固定リンク
「言葉」カテゴリの記事
- 「正念場」という言葉の深い意味(2024.12.30)
- 「豚殺し/ロマンス詐偽」ー 中身は同じというお話(2024.12.26)
- 和菓子、薬、滑舌訓練等々 ・・・ 「外郎」を巡る冒険(2024.12.11)
- 「図に乗る」というのも、突き詰めるのは難しい(2024.12.01)
- 新幹線車内での富士山案内アナウンス、英語バージョン(2024.11.30)
コメント
勉強になりました。大分前の記事なのを承知でコメントします。五月晴れと五月雨、きまって五月の晴れというわけではなく梅雨と関係していたんですね。。。気にかかったので調べたらこのページに当たりました。いやはや天晴でございます。有難うございました。
投稿: 風羅運 | 2010年1月 4日 14:46
風羅運 さん:
コメントありがとうございます。
>きまって五月の晴れというわけではなく梅雨と関係していたんですね。
この言葉のできた時代には、五月の晴れだったんですよ。
(旧暦の五月は、平均して今より 1ヶ月ちょっと遅れますから)
投稿: tak | 2010年1月 4日 16:31
どっちでもいいじゃん
投稿: そんなのどっちでもいいわ | 2014年5月 1日 20:47
そんなのどっちでもいいわ さん:
私は 「どっちかに統一すべき」 とか言っているわけではないのですが、それが理解できないので、「どっちでもいい」 という反応をしたくなっちゃうんでしょうね。
投稿: tak | 2014年5月 1日 21:06