JR西日本と我々の「業」
近頃のマスコミの「JR の重箱の隅つつき報道」に疑問の声をあげているブログがいくつかある。正常な感覚だと思う。
例のボーリング大会開催にしても、冷静に考えれば、法律的には何の問題もない。それでは何が問題なのかというと、「常識」というレベルのことなのである。
常識に反しているというだけでは、第三者はそれを裁くことはできない。確かに、呆れてしまいはするが。
会社が大事故を起こして、死者の数も刻一刻と増え続けているその真っ最中に、ボーリング大会をして、二次会から果ては四次会にまで繰り出すなどというのは、確かにいわゆるフツーの民間会社では考えられないことだろう。
この辺りも、一昨日に論じた「最悪のリスク・マネジメント」の一環と言えば言える。
しかし、記者会見でそのことについて、まるで鬼の首でも取ったように責め立て、あげくトップ記事にしてしまうというのも、どうかと思う。ボーリングに行った 40数名が現場に駆けつけたところで、救助作業にそれほどの助けになったとも思われない。それに、マスコミだってこれまで、関係者の神経を逆なでするような非常識をさんざんしてきているわけだし。
少なくともボーリング大会については、正義を笠に着て声高に責め立てるというよりは、「悲しみに沈む人もいるんだから、あまりはしゃいだら、世間が何というか、ちゃんと考えろよな」と、そっと言ってやるべきことだ。これ以上、必要以上に遺族の感情を逆撫でしてどうするのだ。
だから、一昨日の当コラムでも、ボーリング大会のことについては、第一報を聞いてはいたけれど、一言も触れなかった。まさか、トップ記事になるとも思わなかったし。
ボーリング大会後の二次会にしても、「多人数のキャンセルは困難だった」という都合のよすぎる免罪符で、「キャンセル料を払うぐらいなら、いっそこの際、ちゃんと飲み食いしてしまえ」とばかりになだれ込んだわけだが、これをきちんと非難できる人がどれだけいるか。
自腹を切らずに飲み食いするのを最高の楽しみと思っている人は、世の中にかなり多い。そんなチャンスを逃すのを一生の損のように思う人も少なくない。今回の二次会も互助会とやらの金で「飲み放題コース」だったというから、さぞかし諦めきれなかったのだろう。
一昨日のコラムでは、いざという時、「人は保身に走る」と書いたが、そこまで気が至らないケースでは、「みみっちい欲得」に走る。だから大事故を知りながら、人は飲み食いを諦めないのである。
悲しいまでの「業」を背負っているのは、JR 西日本の社員ばかりではない。せめて、自分はあさましい姿をさらさないように気を付けようと思うのである。
なお、以下のブログにトラックバックさせていただいた。
水沫日記(みなわにっき)その2 「オーバーランが頻発しているのは分かるけど」
カフェ・ヒラカワ店主軽薄 「奇妙な記者会見」
流れるものと残るもの 「オーバーランを見つけるのがマスコミの仕事?」
INSOMNIA CAFE 「ドブに落ちた犬をたたく卑怯な日本人」
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コメント
トラックバックありがとうございます。
ボーリング大会「程度」で騒ぐくらいなら、むしろ「JR西日本の全列車の運行を二~三日止めて、徹底的な安全総点検をやれ」という声が出ても良さそうなものです(事故が起きた路線はさすがにまだ止まっているのか)。
投稿: 山辺響 | 2005年5月 7日 01:03
少なくとも、過密ダイヤを見直さなければ JR 西日本は信頼を取り戻せないのではないかと思います。
それから、「ボーリング大会」 については、とぼけていて、後からバレるよりはよかったかもしれません。
ですから、自ら公表したというのは、ある種の 「自浄作用」 が働きつつあるという見方もできます。(裏でリスク・マネジメントの専門家のアドバイスがあったのは間違いないと思いますが)
投稿: tak | 2005年5月 7日 10:45