JR 西日本の最悪のリスク・マネジメント
組織というものは、何かヤバイことが起きると、その中の各段階でバラバラに保身に走る。その結果、取引先や顧客を、最悪な形で裏切ってしまう。
そんな例は雪印事件などでもさんざん見てきたが、今回の JR 西日本も例外ではないようだ。
JR 西日本は、まず発端となったオーバーランの距離を、運転士がごまかして報告させようとしたようだ。その結果、自らに余計なプレッシャーを与えてしまい、スピードの出し過ぎ、カーブ直前でブレーキをかけるタイミングを逸したことにつながったのかもしれない。
会社首脳は最初の記者会見で、さも線路に置き石があったことが直接の原因であったかのような印象を与えようとした。その結果、逆に責任回避の姿勢と受け取られかねないことになった。
さらに、後からいろいろ細かいミスが報告されている。事故車両に乗り合わせた運転士が、被害者救出を放棄して職場に向かったこと。その際、携帯電話で報告を受けた上司が適切な指示をしなかったこと。その上、当初は携帯電話での報告を受けていなかったかのように取り繕う発表していたこと。
ダメ押しのように、事故車両の車掌に、速度の出し過ぎの認識がなかったと報告するように強要していた疑いまで浮上してきた。(参照)
これらのお粗末さに対して、世論はかなり批判的になるだろう。しかし、自分の勤務する会社が、もし何かやらかしてしまった場合、理想的なリスク・マネジメントを講じることができるだろうかと、考えてみるといい。
自分は決して保身に走らず、冷静に事態を見極めた対処をすることができるという自信があるだろうか。
企業として、きちんとしたリスク・マネジメントのポリシーを徹底していない限り、それは無理だろうと思う。こうした場合、個々人の良心というものは、簡単に麻痺してしまう。それを麻痺させないように保証するのは、企業のシステムである。
リスク・マネジメントの ABC は、ごく単純なことである。各段階で勝手な対応を取らず、トップが全ての責任を負い、指揮を執ること。そして、すべてをきちんと調査して、トップ自ら正直にそれを世間に公表することだ。こんなことは、いっぱしの企業ならば、ちゃんと学んでいるはずなのだ。
学んだことが生かされないことの方が多いのは、せいぜい代々の総務課長クラスがおざなりにリスク・マネジメント・セミナーに参加するだけで、会社全体の共通認識にまでしていないところが多いからである。それは、誰もリスク・マネジメントの重要性を真に受けていないことから来る。
リスク・マネジメントの基本は、まず「真に受ける」ことから始まる。
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