仏教寺院とビキニ
今年のミスユニバース世界大会は、タイのバンコクで開かれている。しかし、川船でビキニ姿を披露する各国代表の写真が仏教寺院を背景としているために、仏教団体が不謹慎と猛反発。
この写真は、政府の申し入れで、大会の公式ウェブサイトから削除された。
その写真がニュース写真として公開されている。ふむふむ、確かにずらりと並んだ魅力的なビキニ姿の背景に、仏教寺院の尖塔が映っている。(参照)
問題は、この写真を撮った側の感覚である。このカメラマンにとっては、背景に映る尖塔は、単に「エキゾチックな光景」でしかなかったのだろう。「いかにもバンコクらしい背景」を探し求めていたら、たまたまこれだったということかもしれない。
もしイスラム寺院のモスクだったりしたら、別の意味でかなり気を遣ったかもしれないが (もっとも、イスラム国でこんなイベントは開かれないだろうけど)、この場合は、宗教施設であるという認識すらあったかどうか、疑問だ。
川船の上でなく、寺院の真ん前の広場だったりしたら、撮影自体が許可されなかっただろう。タイの寺院では、Tシャツ姿やサンダル履きの入場も断られるところがあると聞く。ましてや、ビキニの群は問題外である。
それは、別にタイの特殊事情というわけではない。西洋だって、教会の真ん前でこんな構図は取らないだろう。確かに 「冒涜」 的な臭いがするし、「不謹慎」以前に「異様」だ。
建物の真ん前で取りにくい写真なのだから、川船の上とはいえ、背景に取り入れるのは、やはり遠慮すべきだったろう。とはいえ前にも述べたように、このケースでは、宗教施設という認識すら希薄だったのだろうなぁ。
そう考えると、今回の問題は、異文化理解の問題だと気付く。カメラマンにとっては単に「エキゾチックな建物」でしかなくても、地元の人たちには神聖なものだったのである。
件の写真をみて、「何がいけないの?」と思った人は、海外に行った時、ちょっと要注意である。どこでどう現地の人の神経を逆なでしているかわかったものではない。最近の日本人は、宗教的なものに関する理解が致命的に不足している。「知らずに犯す罪」は重いのだ。(参照)
世界各地で「無邪気に」罰当たりな行動をして、ヒンシュクを買っている。それどころか、自国の神社仏閣の前で、「無邪気に」ビキニの群れの撮影をしかねない。
自国の伝統文化さえも「異文化」になってしまっているという現状を、私は嘆くぞ。
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