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2005年5月20日

Under-the-table money (賄賂)

私は 40歳前後の数年間、某外資系団体に勤務したことがある。その頃、アジア各国支部のスタッフが香港のホテルで 1週間缶詰となり、朝から晩までマーケティングの勉強をさせられたことがあった。

それはとても実戦的な内容で、今でもかなり役に立っている。

何しろ、それぞれ固有の言語をもつアジア各国からスタッフが集まっているのだから、そのセミナーはすべて英語で進行する。講師も英国のマーケティング・スクールから派遣された専門家だった。

朝から晩まで英語漬けになるというのは、かなり疲れるものである。しかも、講師の英国人以外は、それぞれ韓国訛り、北京語訛り、広東語訛りと、ものすごく聞き取りにくい。そんなわけで、夜は酒も飲まずにぐっすりと眠った。

5日間の基本講習が終わると、スタッフが何組かのグループに分かれ、会社が新事業を開始するという想定で、そのプロジェクトを成功させるためのシミュレーションが行われる。

マーケティング・リサーチとして、そのホテルのロビーに繰り出し、見知らぬ外国人相手にアンケート調査を行う。欧米人というのは、コトの次第を話すとかなり協力的で、とても助かった。

アンケート調査の結果をもとに、予算作成からプロモーション運営前段階に至るまでの計画を立案するのである。

この計画立案会議で、とても印象的なことがあった。

というのは、予算作成にあたり、香港支部のスタッフは何はともあれ "under-the-table money" の確保が絶対に必要であると、かたくなに主張するのである。「テーブルの下で渡す金」 、早く言えば「賄賂」である。

「このセミナーは、国際標準で運営されている。香港のローカル事情は忘れてくれよ」と私は言った。

「たとえ国際標準だろうと、under-the-table money の必要な時がある。何も特殊なことじゃない。絶対に確保しておく方がいい。それは経験から学んだことだ」彼は頑として引き下がらない。これでは、話は一向に前に進まない。

「OK、OK、わかった。それじゃ『予備費』の名目で少し取っておこう」

当時、香港はまだ中国に返還される前で、英国に統治されていた。それでも、こんなものだった。中国に返還された今では、"under-the-table money" の重要性はさらに高まっているだろう。

最近の上海は電力不足で、エアコンの必要な夏の間は、企業が交代で操業を停止することになっているという。ところが、中小企業がきちんと操業停止しているのに、大手企業の中には一度も停止せずに夏を乗り切るところもあると聞いた。

最近は「腐敗防止」が厳しくなっているというけれど、これも、"under-the-table money" の威力なのかなあ。

毒を食らわば皿まで・・・本宅サイト 「知のヴァーリトゥード」 へもどうぞ

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